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自己免疫性膵炎、治療法開発につながる免疫反応メカニズムを解明-近大

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2024年10月02日 AM09:20

診断例が増加の自己免疫性膵炎、発症メカニズムは未解明

近畿大学は9月27日、指定難病である自己免疫性膵炎について、発症初期から完全に発症するまでの免疫反応の全容を解明したと発表した。この研究は、同大医学部内科学教室消化器内科部の門渡邉智裕特命教授、原茜助教、免疫学教室の高村史記特命准教授(現:理化学研究所生命医科学研究センター)らの研究グループによるもの。研究成果は、「JCI Insight」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

自己免疫性膵炎は高齢男性によく発症する指定難病で、膵臓が大きく腫れて黄疸・腹痛を伴い、悪化と治癒を繰り返すことが特徴である。この自己免疫性膵炎は、IgG4という特殊な抗体を作る免疫細胞が膵臓に集まることで発症するIgG4関連疾患であることが知られている。

近年、自己免疫性膵炎に関する研究が進んで診断される患者数が増加しており、日本においては現在約2万人と推定されているが、発症メカニズムはいまだに不明である。一般的に、ステロイドを用いた免疫抑制による治療が主流だが、ステロイドには多くの副作用があるうえ、再発も多く、新たな治療法の開発が求められている。

I型IFNを放出して影響及ぼす「炎症形質細胞様樹状細胞」、膵臓に集まる仕組みに着目

研究グループは先行研究において、モデルマウスと臨床検体を用いた研究により、・IgG4関連疾患の発症に形質細胞様樹状細胞が影響を及ぼすことと、形質細胞様樹状細胞が腸内細菌叢の乱れを感知してI型インターフェロン(以下、I型IFN)を大量に放出し、炎症を起こすことを報告した。しかし、形質細胞様樹状細胞が膵臓に集まるメカニズムや、この細胞が引き起こす免疫反応の全体像は不明だった。そこで、研究グループは自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患において、形質細胞様樹状細胞が膵臓に集まる仕組みを明らかにすることを試みた。

モデルマウス作製、初期の炎症は通常型樹状細胞がI型IFNなどを産生し誘発と判明

まず、マウスにpoly(I:C)を反復投与して自己免疫性膵炎モデルマウスを作製、検証を行った結果、発症初期には膵臓に炎症の原因とされる形質細胞様樹状細胞はほとんど存在せず、活性化された通常型樹状細胞がサイトカインであるI型IFNとケモカインであるCXCL9・CXCL10を産生し、初期の炎症を誘導することが明らかになった。

CXCR3陽性CD4T細胞が膵臓に集積、形質細胞様樹状細胞を引き寄せ炎症加速

次に、CXCL9・CXCL10に反応してCXCR3陽性CD4T細胞が膵臓に誘導され、この細胞がさらなる炎症をもたらすことがわかった。また、CXCR3陽性CD4T細胞はインターフェロン-γを産生し、膵臓にダメージを与える一方で、ケモカインCCL25を膵臓で産生する。このCCL25が、最も炎症に大きな影響を与える形質細胞様樹状細胞を最終的に膵臓に引き寄せ、炎症が完成することが明らかになった。つまり、通常型樹状細胞とCXCR3陽性CD4T細胞が初期の炎症を誘導し、CXCR3陽性CD4T細胞と形質細胞用樹状細胞が炎症を完成させることがわかった。

さらに、完成期には形質細胞様樹状細胞とCXCR3陽性CD4T細胞が相互に活性化し合い、大量のI型IFN・CXCL9・CXCL10・CCL25が放出され、炎症が加速することも突き止めた。また、実際にTLR3・・CCL25・I型IFNを阻害すると、炎症はほとんど起こらなかった。ここから、通常型樹状細胞・・CXCR3陽性CD4T細胞を自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患の病的細胞と同定し、病気の初期・完成期におけるこれらの細胞の役割をサイトカイン・ケモカインのレベルで明確にすることができた。

患者血液でI型IFN・CXCL9・CXCL10・CCL25の著明な上昇を確認

最後に、自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患患者の血液を用いた検討を行った。その結果、活動期の自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患では、血液中のI型IFN・CXCL9・CXCL10・CCL25が、健常人・慢性膵炎患者と比較して著明に上昇することがわかった。また、ステロイドにより病気が改善すると、血液中のI型IFN・CXCL9・CXCL10・CCL25は著明に低下した。

新規治療法の開発や、診断・活動性評価につながると期待

この研究成果は、自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患患者の発症メカニズムの解明や、新規治療法開発への新たな一歩につながることが期待される。今後は、サイトカイン・ケモカインレベルではI型IFN・CXCL9・CXCL10・CCL25を標的に、また細胞レベルでは形質細胞様樹状細胞やCXCR3陽性T細胞を標的にした新規治療法の開発が望まれる。「こうしたサイトカイン・ケモカインの血液中の濃度や形質細胞様樹状細胞・CXCR3陽性T細胞の数が自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患の診断や活動性の評価につながることが期待される」と、研究グループは述べている。

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