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医療的ケア児、岡山県内での統一した手技手順書を作成-岡山大ほか

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2024年10月02日 AM09:00

医療的ケア手順の不統一が患者家族の施設利用阻害にも

岡山大学は9月26日、医療的ケア児に対する痰の吸引や経管栄養などの手技を岡山県内で統一するための手順書(パンフレット)を初めて作成したと発表した。この研究は、同大学術研究院医歯薬学域(医)小児急性疾患学講座の鷲尾洋介教授らの研究グループによるもの。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

医療的ケア児とは、医学の進歩を背景として、新生児集中治療室(NICU)等を退院後も引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、痰の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な、主に18歳未満の児童。日本全国で2万人程度と推計され、岡山県の統計では2023年度で318人とされている。これまで、医療的ケア児が家庭に存在することは認識されつつあったが、医療的ケア児やその家族に対する支援は限られたもので、長らく医療、教育、福祉面でのサポートの不十分さが指摘されてきた。2021年に「医療的ケア児およびその家族に対する支援に関する法律」が施行され、医療的ケア児を取り巻く環境は少しずつ変化してきている。しかし、まだまだ十分なサポートがなされているとは言えないのが現状だ。

医療的ケア児は、成長に伴ってさまざまな医療機関に加えて教育施設や福祉施設を利用する必要性が生じる。各医療機関、施設ごとに医療的ケア児に対して行う医療的ケアの手順は統一したものがなかった。例を上げると、これまでは新規施設を利用する際にその施設で行っている医療的ケアの手順が、家族が行っている医療的ケアと違うことが頻繁に生じる実態がある。その結果、家族はケアの違いに戸惑う、施設側は患者ごとに違うケアの仕方を要望されるという事態につながっている。このことは家族にとって新規施設を利用する際にハードルを上げる形となり、また短期入所施設の新規参入を阻むことや医療機関同士のケアの齟齬につながっている。

痰の吸引/経鼻・/導尿などの実施手順・注意点まとめ、9月末公開予定

今回、鷲尾洋介教授は、岡山県内での医療的ケアの標準的な方法が標準化され、前述の問題を改善することにつながっていくことを願い、医療的ケア児に対する医療的ケアの手順書作成に取り組んだ。手順書に関して、これまでは県内で「倉敷地区重症児の在宅医療を考える会」が作成した医療的ケアの手順書があったが、作成されてから10年が経過しており、県内統一のものではなかった。

岡山大学病院小児科と岡山県医療的ケア児支援センター(岡山市北区祇園866)が協力して呼びかけ、多くの県内の基幹病院が参加した。各施設で分担して手順書の内容について検討を重ねているので、施設ごとに手順が違ったり、齟齬が生じたりしないような内容になっている。具体的には痰の吸引、経鼻・経管栄養、導尿のほか、日常生活を送るうえで必要な個別の医療行為について、実施手順や注意点などがまとめられており、完成した手順書は岡山県医療的ケア児支援センターのウェブサイトで9月末に公開される予定だ。今後、この手順書が岡山県全域で標準的な医療的ケアの手順を行う際の指標となることが期待される。

医療的ケア児を取り巻く環境の改善、家族の負担軽減に期待

医療的ケア児とその支援者を取り巻く環境は依然として厳しく、医療・福祉・教育の連携が取れていない、保育園や福祉サービスが足りていない、災害対策が十分に行われていない等、無数の課題がある。このような課題に一つずつ取り組み、少しずつでも医療的ケア児を取り巻く環境が改善され、家族への負担が大きいといった現状が変わっていく必要がある。「障害を持って生きる人々が社会の一員として受け入れられ、その支援者とともに十分なサポートを受けながら成長していける社会を目指して進んでいくために、同手順書がその一助になればと考えている」、と研究グループは述べている。

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