SMNタンパク質レベルを増加・維持する経口SMA治療薬
中外製薬株式会社は9月24日、脊髄性筋萎縮症治療薬「エブリスディ(R)ドライシロップ60mg」(一般名:リスジプラム)について、遺伝子検査により発症が予測される脊髄性筋萎縮症(SMA:spinal muscular atrophy)に対する適応拡大、および生後2か月未満の患者に対する用法および用量追加の承認を取得したと発表した。
エブリスディは、SMN(survival motor neuron)タンパク質の欠損につながる5番染色体の変異によって引き起こされる、SMAを治療するためにデザインされたSMN2スプライシング修飾剤。SMNタンパク質レベルを増加させ、維持することでSMAを治療するよう設計されている。SMNタンパク質は全身に見られ、運動神経と運動機能の維持に重要だ。2020年8月に米国、2021年3月に欧州で、同年6月に日本で承認を取得している。日本では、今回、未発症に対する適応拡大、および生後2か月未満の乳児に対する用法用量追加の承認を取得した。同剤は「脊髄性筋委縮症」に対して2019年3月に厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けており、今回の適応拡大および用法および用量の追加は優先審査のもと承認された。
海外P2試験の成績に基づく承認
今回の承認は海外第2相臨床試験RAINBOWFISH試験の成績に基づくもの。RAINBOWFISH試験は、遺伝学的にSMAと診断され症状が発現していない乳児(初回投与時点で生後6週以内)を対象に、エブリスディの有効性、安全性、薬物動態および薬力学を評価する非盲検、単群、多施設共同、海外第2相臨床試験。本試験には26名の乳児が登録された。一般的に、SMN2遺伝子のコピー数は少ないほど重症となり、同試験には、SMN2遺伝子のコピー数が2以上の乳児が組み入れられた。主要評価項目は、主要有効性解析対象集団において、BSID-III(Bayley Scales of Infant and Toddler Development – Third Edition)の粗大運動スケールで評価した投与開始12か月時点で支えなしで5秒以上座位が保持できる乳児の割合。なお、同試験に日本からは参加していない。
発症前に運動ニューロン脱落開始のSMA、早期診断で治療効果を高められる可能性
SMAは、発症前に運動ニューロンの脱落が始まるとされている。早期診断において重要な役割を果たしている新生児スクリーニングを経て、より早い段階に治療を開始することで治療効果を高められる可能性がある。同社は、症状の有無にかかわらず、診断後すぐに治療が可能になるため、エブリスディによる高い医療上の価値提供が期待される、としている。
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・中外製薬株式会社 プレスリリース