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上皮細胞シートのバリア破綻を速やかに修復し、維持する仕組みを解明-九大ほか

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2024年09月26日 AM09:20

アポトーシス細胞の排除における「」の役割は?

九州大学は9月24日、上皮細胞シートに生じた欠損を速やかに修復する仕組みを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院の池ノ内順一教授、システム生命学府一貫制博士課程5年の長佑磨氏、理学研究院の松沢健司講師、東京大学大学院医学系研究科の本田郁子准教授、北海道医療大学の谷村明彦教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Current Biology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ヒトの体の表面(皮膚)や消化管の表面は、上皮細胞のシートによって覆われており、外界からの異物の侵入を防ぐバリアとして機能している。上皮細胞シートは外界に常に面していることから、摩擦などの機械的なストレスや紫外線ストレスなど、さまざまなストレスに曝されており、ダメージを受けた細胞は細胞死()を起こし、絶えず細胞がリニューアルされている。アポトーシスを起こした細胞(以下、アポトーシス細胞)が上皮細胞シートに残存すると細胞シートの欠損部位となり、そこからさまざまな異物が体内に侵入することを許してしまう。上皮細胞シートのバリアの破綻は、アトピー性皮膚炎や炎症性腸疾患の原因となるため、上皮細胞シート内に生じたアポトーシス細胞は、迅速に除去する必要がある。

これまで、アポトーシス細胞が生じると隣接した上皮細胞が積極的にその細胞を排除することが知られていた。また、その際に「デスモゾーム」と呼ばれる接着構造が重要であることも報告されていた。しかし、アポトーシス細胞の排除においてデスモゾームがどのような役割を果たしているかについては、不明のままだった。

隣接した細胞内アポトーシス細胞の接着面でカルシウムイオンが持続的に上昇

研究グループは今回、上皮細胞シートにおいてアポトーシス細胞の迅速な排除に関わる新しい分子機構を見出した。細胞内カルシウムイオンの濃度変化を検出するプローブ(GCaMP6)を形質膜に標的化させた細胞を用いることで、アポトーシス細胞の排除の際に起こるカルシウムイオンの動態を詳細に解析。

その結果、アポトーシス細胞に隣接した細胞内のアポトーシス細胞との接着面において、持続的にカルシウムイオンの上昇が認められることを見出し、この現象を「Calcium Response in Effectors of apical extrusion (CaRE)」と名付けた。

上皮細胞シートの中でダメージを受けた細胞を周りの細胞が迅速に排除

CaREが接着面に限局して観察されることから、「細胞接着装置が関与するのではないか」との仮説を立てて解析を進めた結果、細胞接着装置であるデスモゾームに、カルシウムイオンの制御に関わる小胞体のIP3受容体が近接していることを見出した。

アポトーシス細胞に隣接した上皮細胞では、デスモゾームの近傍でIP3受容体の活性化が起こることで、細胞接着領域のカルシウムイオンが持続的に上昇し、それによって細胞接着構造を裏打ちするアクトミオシン線維の収縮が促進される。アポトーシス細胞に接している隣接細胞の接着面がアクトミオシン線維によって収縮することにより、アポトーシス細胞をシートから絞り出して排除することを明らかにした。

アトピー性皮膚炎や炎症性腸疾患の病態解明・予防法開発に役立つ可能性

今回の研究により、CaREに関与する分子として、デスモゾームの構成因子、IP3受容体、およびデスモゾームとIP3受容体を連結する分子であるK-Ras誘導アクチン結合タンパク質(KRAP)が同定された。今後は、CaREに関与する因子のさらなる探索に加え、デスモゾーム近傍に位置するIP3受容体を介したカルシウムイオンの制御機構が、どのような生理的意義を持つか、または病態発症においてどのような役割を果たしているかについて、さらなる解明を進めていくとしている。

研究グループは「同知見は、アトピー性皮膚炎や炎症性腸疾患などの上皮バリアの破綻による病態の解明や慢性炎症の新規予防・治療法の開発に資する知見だ」と、述べている。

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