国がんなど国内複数の研究機関が開発
大塚製薬株式会社は9月20日、造血器腫瘍遺伝子パネル検査(製品名:ヘムサイト(R)診断薬、同解析プログラム)について、同社が国内における製造販売承認を取得したことを発表した。同検査は、同社および国立がん研究センターが共同設計し、同センター、九州大学、京都大学、名古屋医療センター、東京大学医科学研究所附属先端医療研究センター、慶應義塾大学医学部との共同研究コンソーシアムにより開発されたものだ。
がん遺伝子パネル検査は、固形腫瘍を対象としたものがすでに保険適用されているが、造血器腫瘍では、製造販売承認されたものはなく、保険診療下でのがんゲノム医療が実施できていなかった。
同製品は、厚生労働省から先駆け審査指定制度の対象品目に指定され、国内で初めて製造販売承認された造血器腫瘍および類縁疾患を対象とした遺伝子パネル検査である。体外診断用医薬品と医療機器プログラムにより構成されている。体外診断用医薬品は、末梢血、骨髄液、組織または体腔液より抽出したDNAおよびRNA中の造血器腫瘍関連遺伝子変異の検出のための塩基配列情報の取得を目的としている。解析プログラムは、組み合わせて使用する体外診断用医薬品等により得られた塩基配列情報を入力することで、その解析結果の表示および出力を行う。
造血器腫瘍ゲノム検査GLに掲載のある遺伝子異常が網羅的に検査できるように設計
近年、世界保健機関(World Health Organization:WHO)等が提唱する造血器腫瘍の診断・治療指針では、ゲノム情報に基づいた診療が推奨され、ゲノム情報を用いずに適切な診断・治療を行うことが困難になりつつある。国内においても、日本血液学会から「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン」が発行され、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など疾患・ステージ毎に遺伝子パネル検査推奨度が提示されている。製品は、同ガイドラインにある造血器腫瘍の遺伝子異常が網羅的に検査できるように設計されており、遺伝子異常による診断、治療法選択、予後予測が可能になることが期待される。
共同研究コンソーシアムで臨床的有用性を検証した九州大学大学院病態修復内科学の赤司浩一教授は、「近年、固形腫瘍を対象にした遺伝子パネル検査が保険適用されて以来、がんゲノム医療が急速に進展している。造血器腫瘍でも、がんゲノム医療の実装を目指し、造血器腫瘍ゲノム検査ガイドラインが発行されたが、造血器腫瘍に使用できる遺伝子パネル検査はなかった。このたびの国産造血器腫瘍遺伝子パネル検査の承認により、造血器腫瘍においてもがんゲノム医療が進み、患者一人ひとりに最適な治療ができることを期待している」と、述べている。
同社は今後、保険適用の手続き、発売に向けた準備を進める。
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・大塚製薬 プレスリリース