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子宮頸部細胞診、AIよる迅速スクリーニング技術を開発-浜松医大ほか

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2024年09月18日 AM09:30

手作業でのスクリーニングの負担や誤見リスクを改善するには?

浜松医科大学は9月10日、パパニコロウ染色された子宮頸部液状化検体細胞診(LBC)標本を迅速にスクリーニングする人工知能()「(ジーニー)」を開発したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科光医工学共同専攻(博士後期課程)の栗田佑希大学院生(再生・感染病理学講座、先進機器共用推進部)と同大再生・感染病理学講座の目黒史織助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

子宮頸がんは、全世界の女性にとって重大な健康リスクをもたらすがんの1つ。このがんの早期発見は治療成功の鍵とされ、細胞診による標本の観察(スクリーニング)が非常に重要である。従来のスクリーニング方法は、細胞検査士が顕微鏡を使用して1つひとつの標本を手作業で慎重に観察している。このプロセスには高度な技術が必要であり、ダブルチェックを伴う作業は肉体的な負担が大きく、高いストレスを伴う。さらに、時間がかかるため結果報告までの遅延が発生しやすく、人間の目によるスクリーニングは誤見のリスクも伴う。

これらの問題を解決し、細胞検査士の肉体的および精神的な負担を軽減するために、AI によるスクリーニングを導入することを考えた。AIを活用することで、スクリーニングの効率を大幅に向上させ、結果報告までの時間を短縮し、より精度の高い結果 を提供することが期待される。

AIでLBC標本を10秒で解析し異常度スコアを算出、高リスク症例の優先対応が可能に

研究グループは今回、共同研究施設から提供された子宮頸部の液状化検体細胞診(LBC)標本をデジタル化し、AIの学習に用いた。AIモデルはOpenAI社が開発したCLIPを用いており、このモデルは画像データとテキストデータの両方から学習することが可能で、画像の特徴とその説明を関連付けることができる。学習したAIモデルはデジタル化したLBC標本を10秒ほどで解析し、その標本の異常度スコアを算出する。1日にスクリーニングする症例群の中で、異常度スコアが高い順に並べ替えることにより、迅速かつ効率的にリスクの高い症例を優先的に対応することが可能になり、スクリーニングの効率化と精度の向上が図られた。

細胞検査士をアシストするようなAIの開発に期待

今回開発したAIは、子宮頸部LBC標本に特化したものであり、実臨床での利用に向けては、さらなる評価が必要だ。「今後は、細胞検査士をアシストするようなAIの開発が期待される。また、他の種類の細胞診標本にも応用が可能かどうかを検討する必要がある。今回の成果を基盤として、より多くの患者に迅速かつ正確な診断を提供できるよう、研究を進めていきたい」と、研究グループは述べている。

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