ADHDの主訴軽減効果が知られるマインドフルネス、姿勢で瞑想しやすさは変わる?
立命館大学は9月6日、「マインドフルネス促進反応尺度」「マインドフルネス阻害反応尺度」を開発し、これらを用いて、注意欠如・多動症(ADHD)傾向の高い人にとって行いやすいマインドフルネス実践時の体の姿勢を明らかにしたと発表した。この研究は、同大OIC総合研究機構の福市彩乃専門研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Japanese Psychological Research」に掲載されている。
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マインドフルネス瞑想はADHDの主訴や、二次障害である抑うつや不安を軽減させる効果があることがわかっている。しかし、注意を集中させたり、じっとして行ったりするマインドフルネス瞑想は、そもそもADHD傾向の高い人にとっては行いにくい要素を含んでいる。
ADHDの人でも行いやすいマインドフルネス瞑想にするための工夫のヒントとして挙げられるのが、体の姿勢だ。マインドフルネス瞑想の実践の場では常に姿勢の重要性が説かれる。また、姿勢が心理的側面に及ぼす影響は数々の研究から判明しており、例えば背筋を伸ばした姿勢では困難な課題に対する取り組みの粘り強さが削がれにくく、仰向けはモノに対する衝動的な動機を低減し、一部の注意機能を高めることがわかっている。そのため、特にADHD傾向の高い人は、猫背になったり椅子の背もたれにもたれかかったりする姿勢よりも、背筋を伸ばして座ったり仰向けになったりしたほうが、瞑想を行いやすい可能性がある。しかし、姿勢が瞑想の行いやすさに及ぼす影響を検討した研究はこれまでになく、そもそも瞑想の行いやすさを測定する方法もなかった。
マインドフルネス瞑想の「行いやすさ・行いにくさ」を測定する尺度を作成
研究グループはまず、マインドフルネス瞑想の行いやすさを測定するマインドフルネス促進反応尺度(MERS)と、行いにくさを測定するマインドフルネス阻害反応尺度(MDRS)を作成した。21人の大学生にマインドフルネス瞑想を5日間行ってもらい、実践で行いにくかったところや、モチベーションになったところを報告してもらった。これをもとに尺度の予備項目を作成し、別の192人の大学生に呼吸瞑想を行った後に回答してもらった。その結果を分析し、MERSとMDRSの項目を確定した。
ADHD傾向のタイプごとの「ボディスキャン瞑想を行いやすい姿勢」が判明
次に、ADHD傾向のタイプごとのボディスキャン瞑想(仰向け、または椅子に座った姿勢で、足の先から頭までの一つひとつの身体部位に注意を向けていく瞑想)を行いやすい姿勢の検討を行った。110人の大学生にADHD傾向を調べる予備調査を行い、その結果から(a)混合型傾向、(b)多動・衝動性型傾向、(c)不注意型傾向、(d)ADHD傾向なしのいずれかに当てはまる19人の参加者に実験に参加してもらった。
その結果、マインドフルな状態の程度は姿勢間で違いがなかったが、多動・衝動性傾向の高い人は、猫背姿勢ではボディスキャン瞑想を行いにくく、仰向けでは行いやすく感じていた。また、背筋を伸ばした姿勢では、多動・衝動性傾向の高い人は行いやすいものの、混合型傾向の人は行いにくく感じていた。
開発した尺度の日本語版をresearchmapの「資料公開」で公開予定
今回の研究により、不注意や多動・衝動性傾向の高い人がボディスキャン瞑想を行いやすいと感じる姿勢がどのようなものかが明らかになった。今後、ADHD傾向のある人がボディスキャン瞑想を行う場合は、自身の特性に合った姿勢で行うことで、より実施しやすく感じられ、継続にもつながることが期待される。マインドフルネスによる効果を得るためには、実践を継続することが重要とされるため、同研究はその一歩として有用と考えられる。
「今回の研究は、厳密な科学的手法により実証されてきたエビデンスだけでなく、実践の場で伝統的に重要視されてきた要素に着目することで、1つの答えを出せたと思っている。このような、科学的には未実証ながら経験の集積により組み上げられた知見にも目を向けることの研究における重要性を改めて認識した。また、今回作成した尺度が今後、日本の研究・実践に役立つことを願って、第1著者のresearchmapページ「資料公開」にて、開発されたMERSとMDRSの日本語版を公開する予定だ」と、研究グループは述べている。
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・立命館大学 プレスリリース