性別などの影響を受ける「食事の嗜好」、日本人の特徴は?
藤田医科大学は9月6日、同大職員の健康診断で聴取した食事頻度調査の結果を男女別に分け解析したと発表した。この研究は、同大臨床栄養学講座の飯塚勝美教授と健康管理部の成瀬寛之教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」でオンライン版に掲載されている。
食事の嗜好は、年齢、性別、住んでいる環境(文化)の影響を受ける。食事の嗜好の違いは代謝パラメータに影響を与えると考えられるが、日本人の特徴はあまり調べられていなかった。さらに、性別ごとの食事の嗜好性が代謝疾患の治療ガイドラインに反映されていることは、これまでなかった。近年、健康経営の観点から、従業員の健康管理は人的資本の強化に重要であり、食事環境の調査はその基本になるとの考え方がスタンダードになってきた。
大学職員への食事頻度調査、性別ごとの食品摂取頻度や代謝マーカーに及ぼす影響を解析
そこで、今回の研究では、藤田医科大学の職員を対象に、性別ごとの食品摂取頻度を調べ、次にそれぞれの食品摂取頻度が代謝マーカー(血糖、腎機能、脂質、尿酸)に及ぼす影響を調べた。藤田学園の職員健診を受けた方で食事頻度調査を行った3,147人(平均年齢35歳、M:968人、F:2,179人)を対象に10品目(肉、魚、卵、乳製品、大豆、緑黄色野菜、芋類、海藻、果物、脂類)の摂取頻度、スナック類などおやつの摂取頻度、砂糖を入れたコーヒー・紅茶の摂取頻度、清涼飲料水の摂取頻度、アルコール摂取頻度を性別ごとに調査。性別ごとに、HbA1c、eGFR(腎機能)、尿酸、脂質(トリグリセリド、HDL-C、non-HDL-C)などの代謝マーカーとの関連を、年齢、BMIで調整し、検討した。
男女間の食品の摂取頻度・嗜好はそれぞれ違うため、食品の摂取頻度・嗜好が血糖や脂質など代謝パラメータとの関連は男女間で異なる可能性がある。20~59歳の日本人3,147人(男性968人、女性2,179人)の健康診断所見を対象とした観察研究を実施し、性・年齢による食習慣の違い、食事頻度と血液パラメータ(eGFR、HbA1c、尿酸、脂質)の関連を検討した。
男性は肉・清涼飲料水・アルコール等、女性は大豆・乳製品・スナック等を摂取の傾向
研究の結果、男性は肉、魚、清涼飲料水、アルコールを摂取する傾向が強かったのに対し、女性は大豆、乳製品、野菜、果物、スナック菓子を摂取する傾向が強く見られた。
HbA1c、eGFR、non-HDL-C、性別ごとに食品の摂取頻度・嗜好との関連は異なる
年齢とBMIで調整した多変量線形回帰モデルでは、男性は、肉の摂取頻度がHbA1cと正の相関(β=0.007、p=0.03)、eGFRと負の相関(β=−0.3、p=0.01)を示したのに対し、女性は、魚の摂取頻度がeGFRと正の相関(β=0.4、p=0.005)を示した。卵と大豆の摂取頻度は、女性においてのみ非HDL-Cと正負の関連を示した(卵:β=0.6、p=0.02、大豆:β=−0.3、p=0.03)。アルコール摂取頻度は、男女ともに尿酸(男性:β=0.06、p<0.001、女性:β=0.06、p<0.001)およびHDL-C(男性:β=1.0、p<0.001、女性:β=1.3、p<0.001)と関連していた。
今回の研究により、日本人においても男女の食事の嗜好性が異なることが示された。また、男女に共通して野菜や肉は摂取しているが、魚、大豆、果物、芋、海藻の摂取は少ないこともわかった。今回の研究データをもとに、不足する食品群(魚、大豆、果物など)を補うレシピに基づき、職場での料理教室を行なうことで、職場での食事に対する啓発活動(食育)に活用し、健康経営にも役立てたいとしている。次に、食事摂取の頻度と血糖、脂質、腎機能への影響に性差が観察されたことは、生活習慣病における栄養治療を行う際に、性別による食事嗜好性の違いを考慮する必要があることを示している。卵の摂取頻度は男性女性で同じでも、女性でのみnon-HDL-Cと正の相関が見られたことから、卵の調理法にも注目する必要があるかも知れない。一方で、アルコール摂取と尿酸、芋摂取と中性脂肪の関連は男女に関わらず見られた。アルコール飲料に含まれるプリン体とイモ(デンプン)はそれぞれ体内で直接尿酸と中性脂肪に変換されることを考えると、原料と代謝物の関係にあるものは、性別によらず食事制限が有効と考えられる。最後に、今回の研究では因果関係を証明するものではないので、性別とその食事嗜好性の違いに基づいた栄養指導が生活習慣病の予防や治療に有効かを確かめる必要がある、と研究グループは述べている。
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・藤田医科大学 プレスリリース