日本における「CAPA」の発症割合・リスク因子・死亡はほとんど不明だった
大阪公立大学は9月5日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の合併症「肺アスペルギルス症」の日本での発症割合や死亡率を解析し、その結果を発表した。この研究は、同大大学院医学研究科臨床感染制御学の井本和紀講師、掛屋弘教授、医療統計学の井原康貴大学院生(大阪市立大学大学院医学研究科 博士課程4年)、新谷歩教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Mycoses」にオンライン掲載されている。
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侵襲性肺アスペルギルス症は、免疫が弱っている人の肺にアスペルギルスというカビの一種が感染して発症する病気。COVID-19に侵襲性肺アスペルギルス症を併発した場合、COVID-19-associated pulmonary aspergillosis(CAPA)と呼ばれる。CAPAは、COVID-19の重要な合併症の一つであることが海外から多く報告されているが、その発症率は国によって大きく異なる。また、日本ではCAPAの発症割合、リスク因子、死亡への影響についての研究はほとんど行われておらず、その実態はわかっていなかった。
0.4~2.7%の割合でCAPAを発症、発症者は死亡率が高いことが判明
研究では、患者の病名や使用された薬などのさまざまな情報を含んだ、MDV株式会社から提供されたDPC(Diagnosis Procedure Combination)データを用いて、15万人以上のCOVID-19患者の中から、CAPAを発症した患者の割合やリスク、CAPAの死亡へ影響を解析した。
その結果、COVID-19の重症度が中等症Ⅱ以上の患者では0.4~2.7%の割合でCAPAを発症することがわかった。また、男性や高齢者(70歳代がピーク)、呼吸器疾患のある人、入院中にステロイドや免疫を抑える薬を使用した人、集中治療室に入室した人、透析を受けた人、輸血を受けた人はCAPAを発症しやすいこと、また、CAPAを発症した人では死亡のリスクが高いことがわかった。
COVID-19患者へのCAPA発症スクリーニング強化に期待
今回の研究で得られたCAPA発症割合は、海外の報告(3.8~35%)と比べ、低い結果となった。この結果は、COVID-19患者のうちCAPAの発症に注意して診療している施設が日本であまり多くなかったことや、医療事情・医療制度が国によって異なることが関係していると考えられる。
「CAPAは早期の発見および抗真菌薬の投与による早期治療が重要なため、本成果がCOVID-19患者へのスクリーニング強化につながることが期待される」と、研究グループは述べている。
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