三菱ケミカルグループは9日、日本経済新聞による田辺三菱製薬の売却報道についてコメントを発表した。「当社が発表したものではなく、そのような事実はない」とした上で、ファーマ事業を含めた全ての事業を対象に「売却を含めたあらゆる選択肢を念頭に置いてポートフォリオ改革を推進している」と、将来の売却の可能性に含みを持たせた。
日経は9日、「三菱ケミG、田辺三菱製薬を売却へ 多額の開発費が重荷」との見出しで報道した。それに対し三菱ケミカルグループは同日午前に「当社に関する一部報道について」を発表し、その中で「ファーマ事業を含めた全ての事業を対象に、グループ全体の事業ポートフォリオのあるべき姿に関して継続的に検討」しているとの基本姿勢を示し、あらゆる選択肢が念頭にあると説明した。
田辺三菱の足元の業績はひどいものではない。三菱ケミカルグループの2024年3月期連結決算で、田辺三菱製薬が担う医薬品事業の売上高は4374億円、営業利益は689億円だった。25年3月期の同事業の売上高は4490億円、営業利益は480億円を見込んでいる。
同社は7月下旬に希望退職者を募集すると発表したが、同社代表取締役の辻村明広氏は8月の第1四半期決算説明会で、「将来の成長を考えた時に、収益が安定している状況でこうした施策を打つのが適切と判断した」と説明。国内事業を維持しつつ、北米を中心に海外で成長するための人材を揃え、組織を強化する意欲を示していた。
売却の可能性は以前にも報道された。三菱ケミカルグループの筑本学代表執行役社長は5月の決算説明会で、同社の医薬品事業の収益性を高く評価する一方、「ファーマのための資金をどう捻出するかは頭の痛い問題で、考えていかざるを得ない」と話していた。