伝染の恐れがある疾病に対しては、予防接種法に基づくワクチンの定期接種を市町村が主体となって実施しているが、かかる費用の多くも市町村が負担している。麻疹・風疹、子宮頸癌(HPV)、破傷風等のA類疾病では9割、インフルエンザ(高齢者)、新型コロナウイルス感染症等のB類疾病に関しては3割程度を地方交付税で負担している現状。
厚労省の関係検討会では、おたふくかぜ、帯状疱疹等に対するワクチンの定期接種化についても議論しており、さらなる市町村の負担増も予測される。
市町村では、市内の医薬品卸業者から見積を複数取得し、より安価な業者と随時契約してワクチンの価格を安価に抑えている事例や、入札で決定した医薬品卸業者と直接契約を結び、企業からの入札額等を公表することで価格の透明性確保を図り、価格面でも競争性を保ち安価に抑えている取り組みも見られた。
これらを踏まえ、厚労省は定期接種の継続に向け、定期的に接種費用の可視化と透明性の確保を図ると共に、接種にかかる費用の適正化にもつなげるため、ワクチンに関する価格調査等の実施を基本計画に明記する案を示した。調査対象として、各市町村の定期接種ワクチン別の委託契約単価(ワクチン価格と手技料の合計)、接種医療機関のワクチン価格調査とした。
また、国民と関係者への情報提供の実施も記載すべきとし、調査、接種費用の適正化に取り組む自治体の事例について、厚労省のホームページや市町村の説明会等を通じて情報提供を行うこととした。
坂元昇委員(川崎市健康福祉局医務監)は自治体の視点から、「市町村が医療機関に支払う接種委託単価は当然税金で支払うので、公開対象となる。国が市町村を定期的に調査し、使用金額を公表しても法的に何ら問題ない」と述べるなど、提案内容に賛同する声が相次いだ。
伊藤澄信委員(順天堂大学特任教授)は、「市町村の事務負担軽減を考慮すると、薬価と同様にある程度の目安を示すべきでは」と述べた。