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褥瘡にフェロトーシスが関与、阻害剤「吸入」でマウスの潰瘍縮小-群大ほか

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2024年09月06日 AM09:00

さまざまな要因が示唆される「」、フェロトーシスとの関与は?

群馬大学は8月29日、褥瘡(じょくそう)の病態において潰瘍の形成にフェロトーシスが関与していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科皮膚科学分野の内山明彦講師、金沢医科大学総合医学研究所生命科学研究領域細胞医学研究分野の岩脇隆夫教授、群馬大学食健康科学教育研究センターの鳥居征司教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Dermatological Science」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

加齢による変化(脂肪・筋肉量の低下、骨突出、免疫能低下、知覚低下、創傷治癒力低下など)によって高齢者では褥瘡が生じやすく治りにくいことが知られている。超高齢社会を迎えている日本では、褥瘡患者数も増加し、褥瘡治療の医療費や人件費も増大しているため、褥瘡の予防・治療・管理の重要性は高まっている。褥瘡の発症には虚血再灌流障害(虚血になっていた組織に血液が再度流れ込むことで生じる炎症)により生じる酸化ストレス、血管の障害、炎症を生じる免疫反応、細胞死などさまざまな要因が関与していることが明らかになりつつあるが、いまだ革新的な治療薬の開発には結びついていない。

鉄依存性の細胞死「」は2012年に発見されたプログラム細胞死の1つで、酸化ストレスが関与し、細胞膜で脂肪過酸化が拡大することで実行される。近年、フェロトーシスが腎臓や心臓、脳の虚血再灌流障害に関わることが明らかとなった。研究グループはこれまでに、脳虚血モデルにおいて、揮発性フェロトーシス阻害剤「(2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl)」を吸入することでフェロトーシスおよび臓器障害を抑制し、脳保護作用を示すことを報告した。しかし、皮膚の虚血再灌流障害が関わる急性期褥瘡におけるフェロトーシスの役割は明らかではなく、TEMPOが皮膚に関連する疾患、特に褥瘡にどのような影響を及ぼすのかは十分に研究が進んでいなかった。

揮発性フェロトーシス阻害剤TEMPO吸入、褥瘡マウスモデルの潰瘍が有意に縮小

そこで今回、TEMPO吸入による急性期褥瘡への効果およびその制御機構を明らかにすることを目的とした研究を行った。実験では、マグネットを用いた皮膚の圧迫による褥瘡モデルマウスを用い、圧迫を解除した時点からTEMPOの吸入を開始した。結果、TEMPOを吸入したマウスでは皮膚の圧迫による褥瘡の大きさが有意に縮小することを見出した。

TEMPOにより酸化ストレス・炎症細胞など軽減、フェロトーシス関連因子発現を正常に

褥瘡の潰瘍部では酸化ストレスの結果、炎症を引き起こす細胞が増え、血管障害による低酸素の環境や細胞死を生じる。そこで研究グループは、マウスの褥瘡部位の皮膚組織を用いて炎症細胞浸潤や血管量、酸化ストレスについて調べた。その結果、TEMPO吸入を行ったマウスではコントロール群と比較して、炎症細胞数(リンパ球)や血管障害が軽減していた。さらに酸化ストレス応答因子であるNrf2シグナルの発現が軽減し、抗酸化因子(HO-1)の発現も軽減していた。

さらに線維芽細胞を用いた細胞レベルの実験において、TEMPOを気化して反応させることで濃度依存性に細胞死を抑制し、フェロトーシス関連因子(GPX4、ACSL4、4-HNE)の発現を正常レベルに近づけ、酸化ストレス関連因子(NOX2、HO-1)を軽減することも見出した。

さまざまな組織の虚血再灌流障害に対する臨床応用につながると期待

今回の研究結果から、褥瘡の病態にはフェロトーシスが関与し、TEMPO吸入によるフェロトーシスの阻害は褥瘡の形成を抑制することが明らかになった。急性期褥瘡の主要病態である皮膚虚血再灌流障害で生じる酸化ストレスは炎症細胞浸潤や血管障害、アポトーシス、フェロトーシスを引き起こす。フェロトーシスを生じることは、酸化ストレスや炎症をさらに強めることで組織損傷を悪化させることが考えられた。揮発性フェロトーシス抑制剤TEMPOを吸入することで、細胞死と二次的な酸化ストレスおよび炎症を軽減し、組織障害による潰瘍の進展リスクを大幅に軽減する可能性が示された。

揮発性フェロトーシス阻害剤TEMPOによる「吸入」という新しい投与方法と強力なフェロトーシス阻害作用は、皮膚を含むさまざまな組織の虚血再灌流障害に対する臨床応用につながることが期待される、と研究グループは述べている。

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