皮膚を摘出せず内部や表皮幹細胞状態を予測するAIシステムを開発していた
藤田医科大学は8月29日、非侵襲的に、皮膚内部の幹細胞の数や分布を可視化する独自AIシステムを開発し、世界で初めて皮膚内部の幹細胞の加齢変化を非侵襲的手法でイメージとして捉えることに成功したと発表した。この研究は、日本メナード化粧品株式会社、同大医学部応用細胞再生医学講座の赤松浩彦教授ら、皮膚科学講座の杉浦一充教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Skin Research and Technology」オンライン版に掲載されている。
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一般的に皮膚の幹細胞を解析するためには、皮膚を摘出し、病理学的な手法により、その断面に特殊な染色を施し、幹細胞を特定する必要がある。研究グループはこのような従来の手法に対し、皮膚を摘出することなく非侵襲的に皮膚の内部の幹細胞の状態をイメージングするシステムの開発を進めてきた。LC-OCT(Line-field Confocal Optical Coherence Tomography)技術により取得した皮膚内部の3次元画像と皮膚の状態および表皮の幹細胞(表皮幹細胞)の形や分布を独自AIに学習させることで、皮膚を摘出することなく内部や表皮幹細胞の状態を予測することが可能となった。
従来の病理学的手法との比較、AIシステムの表皮幹細胞解析精度「高」確認
今回の研究では、AIシステムによる表皮幹細胞の解析精度を検証するために、従来の病理学的手法を用いて解析した結果と比較した。同一検体に対して、皮膚内部の表皮幹細胞の数について同AIシステムによる解析と病理学的手法を用いた解析を実施。その結果、表皮幹細胞の数(割合%)が一致した。以上のことから、同AIシステムの表皮幹細胞の解析精度は高いことが確認できた。
加齢に伴う表皮幹細胞「減」も非侵襲的に確認
これまでの研究から、加齢とともに表皮幹細胞の数が減少することが明らかになっている。今回、同AIシステムを用いて、非侵襲的に20~60代の女性被験者16人の頬部における表皮幹細胞の数や分布について解析した。その結果、これまでの研究結果と一致して、表皮幹細胞の数が加齢に伴って減少することが確認できた。また、同じ年代の被験者でも幹細胞の数には個人差があることも確認できた。
再生医療や抗老化技術開発への応用に期待
これらの研究成果により、同AIシステムは非侵襲的に皮膚外部から内部の状態や皮膚の再生能力を見極める技術として有用であり、皮膚の再生医療や抗老化技術の開発への応用が期待される、と研究グループは述べている。
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・藤田医科大学 プレスリリース