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遺伝的に肥満になりやすい人、運動量増でリスク低減の可能性-岩手医科大

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2024年09月05日 AM09:30

肥満は体質的になりやすい/なりにくい人あり、遺伝的な影響も

岩手医科大学は8月29日、遺伝的な肥満リスクを表す肥満ポリジェニックスコア(obPGS:obesity polygenic score)を日本人で計算するための新たな計算式(モデル)を開発したと発表した。この研究は、同大いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)生体情報解析部門の須藤洋一特命准教授、同部門長の清水厚志教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Human Genetics」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

、心疾患、糖尿病等の発症には日常の生活習慣が大きく関わっている。中でも肥満は、喫煙や過度の飲酒と並んで、これらの疾患のリスクを高めることが知られている。一般的に、肥満の主な原因として食生活の乱れや運動不足が挙げられる。その一方、肥満にはそもそも体質的になりやすい人となりにくい人があり、遺伝的な影響も受けていることが知られている。肥満を防止、あるいは改善するためには、適度な運動を行い、食事量を調整することが有効とされている。遺伝的に肥満になりやすい人への対処法を検討するため、研究グループは今回、遺伝的な肥満のなりやすさを表すポリジェニックスコア(PGS)を計算する方法を開発した。

PGSは、疾患などへの遺伝的な罹りやすさ(リスク)を示す指標で、現在さまざまな疾患に対して開発が進められている。肥満に対するPGSの計算法は、研究開始時点で、すでにいくつかが開発されていたが、ほとんどが欧米人を対象に開発されたものだった。PSGは民族が異なると精度が悪くなることが知られている。日本人を対象とするには新たな方法が必要なため、日本人データをもとにobPGSを開発した。

obPGS「高」でも、余暇運動量が増えるほど肥満リスクは下がる

東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査参加者の情報を利用し、新たに開発した計算方法を使って、約7万人分のobPGSを計算した。この数値を使い、約7万人をobPGSが低い群(下位10%)、高い群(上位10%)、それ以外の中間的な群、の3群に分けた。まず、obPGSが低い群と高い群を比較すると、高い群では約4.8倍、実際に肥満になるリスクが高いことがわかった。

続いて、このobPGSが高い群において、余暇の運動量が多い場合に肥満リスクはどのように変化するかを調べた。その結果、obPGSが高くても、余暇運動量が増えるほど、肥満リスクは下がることがわかった。このような結果から、仮に遺伝的なリスクが高い人でも、運動量を適切に増やすことで、一定の肥満防止効果が期待できることが示された。

一方、遺伝的な肥満リスクを運動習慣のみで解消は困難

一方で、余暇運動量とobPGSが最も低い群と比較して、余暇運動量とobPGSが最も高い群は肥満リスクが3.2倍程度存在していた。言い換えれば、肥満の遺伝的なリスクが高い集団では余暇時間に多く運動をしていたとしても、遺伝的なリスクが低い集団ほどは肥満リスクが下がりきらないことを意味している。こうした結果は、遺伝的な肥満リスクを運動習慣だけで解消することは困難であることを示している。

obPGS「高」でも塩分摂取少ない人では肥満リスク抑えられる

今回の研究では、運動習慣の他に塩分摂取量でも同様の解析を行った。塩分摂取量は運動習慣とは逆に、増加すると肥満リスクが高まることが知られている。こちらもobPGSで群を分けたうえで解析した。その結果、obPGSが高くても塩分摂取が少ない人では、肥満リスクが抑えられていることがわかった。

肥満が引き起こす疾患の個別化予防に期待

今回はobPGSと生活習慣との関わりについて検証した。生活習慣改善は肥満防止に有効だが、遺伝的な肥満リスクは個人ごとに異なる。したがって、肥満を防止し、健康的とされる体重を維持するために必要な努力も個人ごとに異なる。自分自身の体質と向き合い、リスクを適切にコントロールすることが、肥満やそれが引き起こす疾患の個別化予防につながると期待される、と研究グループは述べている。

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