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認知症の発症、性ホルモン減少によるRNA顆粒形成因子減少が関連-都長寿研

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2024年09月04日 AM09:10

ストレスや核の情報制御に重要なRNA顆粒、老化や性ホルモン減少とどのように関連?

東京都健康長寿医療センター研究所は8月29日、ヒトの細胞でストレスを回避するにあたって重要な役割を果たす「」と呼ばれる構造体を構成する因子が「」の作用を受け、老化および認知症の進行の予防において重要な働きをすることを発見したと発表した。この研究は、同センター老化機構研究チームシステム加齢医学研究の井上聡研究部長、高山賢一専門副部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Aging Cell」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ヒトの細胞は紫外線、熱、有害な化学物質などのストレスを受けるとRNAおよびRNA結合タンパク質から成る「RNA顆粒」(ストレス顆粒と呼ばれる)という構造物を形成することにより細胞をダメージから守っていることがわかってきた。また細胞の核ではDNAおよびRNAを生成する情報制御が行われているが、その品質管理をすると考えられる「RNA顆粒」(パラスペックルと呼ばれる)も存在することがわかっている。しかしながらこれらRNA顆粒が老化や認知症などの高齢者特有の病気の発生においてどのような作用を有するかは明らかではなかった。

また男性ホルモンや女性ホルモンという「性ホルモン」は高齢者の健康を支え、骨粗鬆症や認知症などの疾患を予防する働きがあることが推測されている。また老化に伴い性ホルモンが減少することが老化や認知機能の低下など悪い影響を引き起こすと言われている。研究グループはこれまで、性ホルモンの抗老化作用に着目し、その働きの仕組みについて研究を行ってきた。その中で「RNA顆粒」を構成するタンパク質群は、がんなどの病気において男性ホルモンや女性ホルモンが作用において重要な働きをすることを見出し報告してきた。

RNA顆粒に関連する2つのタンパク質、高齢マウスでは減少

研究グループでは脳の老化に着目し、「RNA顆粒」と老化の関係について解析を行った。特にストレス顆粒を形成する中心因子であるG3BP2タンパク質、核内のパラスペックルを形成する中心因子であるPSFタンパク質が老化に伴いどのように変化するかを解析した。

まず若いマウスの脳内では、特に神経細胞に両タンパク質が多く存在することが観察された。一方、高齢になったマウスは、これらのタンパク質が減っていた。研究グループの以前の研究で、G3BP2は男性ホルモンによりヒトの細胞でも誘導されること、PSFは女性ホルモンや男性ホルモンの受容体産生を支えることを報告してきた。今回、新たに性ホルモンはマウス脳内において両者の産生を促す可能性が示され、加齢による性ホルモンの減少が両タンパク質減少の一因と考えられた。

二因子は核で会合し神経機能を支持、認知症患者の脳では両者減少

さらにヒトの神経由来の細胞を解析したところこの二つの因子は核において会合し、両者は協調してRNAに働きかけ神経作用に重要な遺伝子の産生を促すことで神経の分化や生存を支えていた。また、ヒトの脳やアルツハイマー型認知症の患者の脳でも、神経の核において両者が存在すること、健康なヒトの脳と比べ認知症患者の脳では両者が減少しており、病気の発生において予防的に働いていることが示された。

認知症発生の根本的な原因解明につながることに期待

今回解析した二つのタンパク質は脳において重要な働きがいくつか知られている。今回の研究により別々のRNA顆粒において重要な因子であった両タンパク質が一緒に核において協調する新しい第三の働きが解明された。また実際の患者の脳において両者が減少していることも初めて示すことができ、病気の発生の仕組みを理解するうえで重要な知見と考えられる。アルツハイマー型認知症の発生ではアミロイドβやタウタンパク質と呼ばれる有害なタンパク質が蓄積することが知られている。「G3BP2やPSFはこれらタウタンパク質やアミロイドβの前駆体タンパク質の産生を制御する可能性が知られており、今後の研究の進展により認知症発生の根本的な原因の解明に結び付くことが期待される」と、研究グループは述べている。

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