骨盤底筋群のみを効果的に動かせているかは患者の感覚頼みだった
国立がん研究センターは8月29日、同センター東病院、株式会社フジタ医科器械、メディエリアサポート企業組合、株式会社ソフケン、自治医科大学の5者が共同開発した筋電計(製品名:MyoWorksプラス)が医療機器として2024年4月27日に薬事認証されたことを発表した。同機器は、排泄機能障害のある患者が筋電を活用した骨盤底筋群のトレーニングに使用する筋電計である
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肛門括約筋や肛門挙筋で構成される骨盤底筋群は、尿道や肛門を絞めたり緩めたりする筋肉であるが、リハビリテーションで患者自身の筋肉が効果的に作用しているのかわかりにくいといった問題があった。特に、骨盤底筋群および腹筋の収縮について定量的な測定ができないことから、骨盤底筋群のみを効果的に動かせているかどうかは、患者自身の感覚に頼らざるを得なかった。これは、患者にとっても医療従事者にとっても客観的にリハビリテーション効果を判断することを難しくしている問題となっていた。
こうした問題点の解決のため、筋電を活用した排泄機能障害の改善を目的とした骨盤底筋群のトレーニング向け筋電計「MyoWorksプラス」の開発に2018年7月18日から開始。医療者がより簡便に利用でき、小規模な医療施設でも導入可能な医療機器をコンセプトに開発が進められてきた。そして、2024年4月に製品化および医療機器認証取得に至った。
骨盤底筋群および腹筋の収縮程度を示す筋電波形をモニター画面で確認
「MyoWorksプラス」を利用した骨盤底筋群のトレーニング(バイオフィードバック療法)は、骨盤底筋群および腹筋の収縮程度を示す筋電波形をモニター画面上で確認でき、医療従事者と患者双方に筋肉の収縮程度が可視化される。
高額な専用モニターを使用せず、汎用品のAndroid OSに対応したタブレットと接続して使用することを想定。本体も小型で持ち運びも容易な設計となっており、携帯しての使用が可能。小型でベッドサイドに設置しやすいため、さまざまな診療の場面でセッティングが可能。ポータブルでの使用も見据えて、装置本体の駆動を乾電池方式とした。デザインは専門のデザイナーにも協力してもらい、排泄をイメージさせないよう工夫した。
プローブは患者ごとに使用できるようディスポーサブル、実施時のデータはcsv保存も可能
ソフトウェア開発において、患者にとっては自身の骨盤底筋群の筋収縮が、医療従事者にとっては測定結果の視認性がよいインターフェースにした。骨盤底筋群のトレーニング際に肛門管に挿入するプローブは、患者ごとに使用できるようディスポーサブルとし、衛生面に配慮した製品を実現した。
骨盤底筋群のトレーニング実施時のデータは、タブレット内にPDFファイル形式で保存することができ、レポートとして印刷も可能だ。経時的な測定結果の推移を確認することで、診療に応用でき、また、研究者向けデータとして筋電図波形をcsvファイル形式で保存することもできる。
国がん東病院大腸外科クオリティマネジメント室長の西澤祐吏医師は「直腸がん術後の排便機能障害の研究を進める中で、便失禁診療を普及させる必要性を感じ、バイオフィードバック療法の医療機器開発を行ってきた。MyoWorks プラスが直腸がん術後における患者QOLの向上に貢献できれば幸いだ」と述べている。
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・国立がん研究センター プレスリリース