生殖医療治療成績向上に向け、時間生物学に着目
東京医科大学は8月30日、毎日朝食を摂取する人は、そうでない人と比較して生殖補助医療(ART)治療後の生産率が高く、流産率が低いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大産科婦人科学分野の西洋孝主任教授、小野政徳准教授ら、同大医療データサイエンス分野の折原隼一郎講師、金沢大学の藤原浩名誉教授、安藤仁教授、大黒多希子教授、毎田佳子教授、京都ノートルダム女子大学の藤原智子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrition」オンライン版に掲載されている。
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生殖医療の治療成績は、薬剤・胚培養・凍結技術の改善とともに進歩してきた。さらなる治療成績の向上のためには、新たな視点での介入法が求められる。そこで今回研究グループは、時間生物学に着目した。生物の生体リズムは、時計遺伝子群の周期的な発現により形成され、さまざまな標的遺伝子の発現を制御している。この生体リズムは、視床下部の視交叉上核に存在する中枢時計と、全身の細胞にある末梢時計によって制御されており、時計機能の異常は糖尿病、脂質異常症、高血圧、うつ病の発症リスクを高めることが報告されている。最近では、夜勤が多いシフトワークが、排卵障害、不妊症および不育症のリスクを増加させることも明らかになった。
不妊症患者の朝食摂取頻度とART成績との関連を検討
今回の研究では、不妊症患者における朝食摂取頻度とART成績との関連を検討した。年齢、喫煙状況、飲酒状況、肥満度、抗ミュラー管ホルモン値、妊娠分娩歴を含む潜在的交絡因子を調整後、ART成績の多変量解析を行った。
週に6-7回朝食摂取の人は、ART治療後の生産率が高い傾向
患者を1週間の朝食の摂取頻度に基づいてグループ分けし解析。その結果、毎日(6、7回/週)朝食を摂取する群は、他の群と比較してART治療後の生産率が高く、流産率が低いことが示された。毎日朝食を摂取することは、良好なART成績と関連していた。
今回の研究結果は、ARTで毎日朝食を摂取することの重要性を示唆している。毎日の朝食摂取という患者自身による介入が、ARTの成績向上に寄与することが期待される、と研究グループは述べている。
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