慢性腎臓病へのICD使用の有効性は?
藤田医科大学は8月30日、心不全患者の心臓突然死(SCD:sudden cardiac death)に着目し多変量Cox比例ハザード解析を通して、予後予測因子の検討を行った結果を発表した。この研究は、同大ばんたね病院の祖父江嘉洋准教授と渡邉英一教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「ESC Heart failure」に掲載されている。
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心不全患者における主な死因のひとつとして心臓突然死(SCD)があり、心不全患者の死因の9~22%を占めている。その原因は心室頻拍(VT)・心室細動(VF)が多く、心臓植込みデバイスICDはこれら不整脈を自動的に感知し、抗頻拍ペーシングや電気的除細動を行うことでSCDを回避することが可能だ。ICDは1980年代より臨床応用され、心不全患者の生命予後を改善し、現在では確立された治療法になっている。
ICDが日常臨床に導入され、約40年が経過した現在でも、ICD植込み適応基準はこれまでの臨床研究を基にNYHA(New York Heart Association)分類と左室収縮能の評価である左室収縮能(LVEF; left ventricular ejection fraction)の2項目を中心に決定されている。しかし、ICD適応外の患者におけるSCDや、適応と判断されるもICD植込み後に致死的不整脈を認めず一度も作動することのない患者など、そのリスク層別化は十分にできていなかった。また、これまでの研究から血液供給が損なわれている患者のSCDの発生率は22%と高く、心不全患者にICDを使用することの有効性を示すデータがある一方で、慢性腎臓病患者の重要な臨床集団は含まれていなかった。
心不全患者のSCD発生頻度・予後予測因子を評価
そのため今回の研究では、心不全患者の突然死の発生頻度を評価するとともに、その予後予測因子を評価した。2008年~2015年までの間に藤田医科大学病院へ入院しNYHA ⅡもしくはⅢ度の心不全患者を対象に退院後のSCD発症と、その予後予測因子を評価。突然死の定義は非外傷性であり、症状発症から24時間以内の死亡もしくは搬送時または病院到着時にVT/VFを認めた場合とした。
eGFRが独立したSCD予測因子、予後予測力は3年目以降に低下
評価の結果、1,676症例の心不全患者のうち、平均観察期間2年で198人が突然死を発症。そのうち全体の約4分の1にあたる23%(46症例)が3か月以内に発症していた。多変量Cox比例ハザード解析の結果、eGFR(推定糸球体濾過量)<30ml/min/1.73m2およびLVEF ≦35%が独立したSCDの予測因子であり、従来のNYHA分類、LVEFに加え、eGFR<30ml/min/1.73m2を追加することが、統計学的に有意であったことが明らかとなった。同時にeGFRの予後予測力は3年目以降に低下していくことも判明した。同研究結果により、これまでに明らかにされているNYHA分類、LVEFに加え、eGFRが独立した予後予測因子ということが明らかになった。
SCDの正確なリスク層別化、適切なICD植込みの適応評価に期待
NYHA分類とLVEFに、eGFR <30ml/min/1.73m2を追加し評価することにより、心不全患者のSCDの正確なリスク層別化および、適切なICD植込みの適応評価が可能となり、心不全患者の生命予後の改善が期待される。本研究成果により、心不全退院後3か月間、着用型除細動器(WCD)というベスト型の除細動器の着用を通して、SCDの予防、予後の改善が期待される、と研究グループは述べている。
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