半月板変性断裂による機能損失を防ぐ新規治療法が求められている
群馬大学は8月21日、体外衝撃波治療の半月板変性断裂に対する治療効果を確認したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科整形外科学分野(筑田博隆教授)の研究グループによるもの。研究成果は、「Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy」に掲載されている。
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半月板は衝撃吸収などの重要な役割を担っており、変形性膝関節症の発症や進行を予防するためには、半月板の変性や損傷の予防と治療が不可欠だ。半月板変性断裂は、加齢に伴って変性が生じた半月板に発生する断裂であり、若年者のスポーツによる断裂とは異なり、治療効果が得られにくいとされている。
一般的には関節鏡視下半月板切除術が行われるが、この手術では半月板機能を完全に保つことが難しく、術後に関節軟骨の減少を引き起こすことが知られている。そのため、半月板変性断裂による機能損失を防ぐ新たな治療法が求められている。
確立した治療法のない半月板変性断裂で、体外衝撃波による治療効果を確認
研究グループはラットの半月板を用いた先行研究で、体外衝撃波治療が効果を示すことを確認している。この知見をもとに今回、29人のヒトを対象とした体外衝撃波治療の半月板変性断裂に対する効果を調査する無作為化臨床試験を行った。
治療群と未治療群に無作為に分けて調査を実施した結果、衝撃波治療を行うことで、治療後1年で半月板変性の指標や治癒の指標であるMRI T2マッピングで測定したT2緩和時間の減少と、疼痛の緩和効果が確認された。
変性半月板に対する新規治療法確立に向けた重要なステップとなることに期待
体外衝撃波治療は、筋肉や腱膜に対する組織修復効果や疼痛緩和効果が知られている。また、ラットを用いた先行研究では、体外衝撃波が半月板に対して治療効果を示すことが確認されていたが、ヒトにおいて変性半月板に対する衝撃波治療の効果は依然として不明だった。しかし今回、ヒトを対象とした変性半月板に対する衝撃波治療の臨床試験を行い、その有効性の一助となる結果を世界に先駆けて示した。
「本研究の成果は、変性半月板に対する新たな治療法の確立に向けた重要なステップとなることが期待される」と、研究グループは述べている。
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