画像診断依存で早期発見が難しい膠芽腫、血液・尿などによる簡便な検査法開発が必要
金沢大学は8月20日、尿中D-アスパラギンの濃度が膠芽腫患者で有意に低下していることを発見したと発表した。この研究は、同大附属病院検査部の中出祐介副臨床検査技師長、医薬保健研究域医学系・脳神経外科学の木下雅史講師、中田光俊教授、脳神経内科学の篠原もえ子准教授、小野賢二郎教授、腎臓・リウマチ膠原病内科学の岩田恭宜教授、和田隆志学長ら、KAGAMI株式会社の研究グループによるもの。研究成果は、「Acta Neuropathologica Communications』のオンライン版に掲載されている。
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膠芽腫は、脳腫瘍の中で最も悪性度が高く、治療抵抗性を示す予後不良な疾患だ。多くの患者は、神経症状が現れてから病院を受診し、CTやMRIなどの画像診断で発見されるため、診断が遅れることが最大の問題だ。また、経過中の再発は定期的なMRI検査時に確認されることが多く、早期発見が難しい。早期発見が治療成績の改善に重要とされているが、そのためには一般的に行われている血液や尿を用いた簡便な検査法の開発が求められている。
尿中Dアスパラギンによる健常者/膠芽腫患者の判別、感度88%・特異度92%
今回の研究では、まず膠芽腫患者から摘出された腫瘍組織のキラルアミノ酸解析を行った。腫瘍組織では非腫瘍組織に比べD-アスパラギン濃度が増加していた。一方、尿中D-アスパラギン濃度は健常者に比べ膠芽腫患者で減少していた。この尿中Dアスパラギン濃度は、健常者と膠芽腫患者を精度高く判別できた(感度88%、特異度92%)。さらに、膠芽腫摘出後には健常者とほぼ同じ濃度まで尿中D-アスパラギン濃度は増加した。これらの結果は、膠芽腫組織がD-アスパラギンを取り込んでいることを示唆している。マウスの脳内に膠芽腫を移植してもヒトと同様に尿中D-アスパラギン濃度が減少した。以上より、尿中D-アスパラギン濃度を測定することで、脳内の膠芽腫の存在を知ることが可能であることがわかった。
診断ツールとしての実用性確認のため、大規模検証が必要
この研究成果は、尿中D-アスパラギンが膠芽腫の早期診断および病勢評価における有用なバイオマーカーとなり得ることを示している。今後は、複数の他施設とも連携し、より大規模な患者群を対象として検証し、尿中D-アスパラギン濃度の測定が診断ツールとしての実用性を持つかどうかを確認することが必要だ。同研究成果は、今後の膠芽腫医療の発展に大きく寄与することが期待される、と研究グループは述べている。
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