コロナ後遺症患者のうち、起立性調節障害を疑って起立試験を行った86人の特徴を調査
岡山大学は8月20日、同大病院のコロナ後遺症外来(コロナ・アフターケア外来)を受診した患者に見られる「起立性調節障害」の有無とその特徴について研究を行い、その結果を発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科の加藤篤之大学院生、同大学術研究院医歯薬学域(医)総合内科学の大塚文男教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
新型コロナは、感染からの回復後も倦怠感などの症状が長引くことがあり、新型コロナウイルス罹患後症状(コロナ後遺症)といわれている。コロナ後遺症の症状は、全身倦怠感だけでなく、頭痛、睡眠障害、味覚・嗅覚障害など多岐にわたる。
同大病院のコロナ・アフターケア外来では、2021年2月15日の開設からこれまで1,000人を超える新型コロナ後遺症患者を診療してきた。今回研究グループは、2021年2月~2023年4月までの間に、同コロナ・アフターケア外来を受診したコロナ後遺症患者691人のうち、起立性調節障害を疑って起立試験を行った86人について、試験結果と後遺症の症状や内分泌学的な特徴について検討した(10歳未満は除外)。
起立試験陽性38%でそのうち約半数が20歳未満、吐き気・頻脈などの症状
その結果、33人(38%)が起立試験陽性で、そのうち約半数である16人(48.5%)が20歳未満の若年者だということがわかった。起立試験陽性の後遺症患者には、吐き気と動悸の症状が多く、起立時の頻脈とともに、起立直後の拡張期血圧の上昇が認められた。また、起立試験陽性の若年の後遺症患者では、下垂体ホルモンである血中の成長ホルモンが低いこともわかった。
起立性調節障害は、身体的な原因がある一方で、心理社会的なストレスも発症に関与しているとされている。症状が重い場合は、症状改善のために薬物治療と並行して周囲の環境を整えることも大切だ。自律神経の働きが不十分であることが原因とされ、多くは学童期から思春期にかけて発症するが、通常は成長とともに改善する。ストレスやホルモンバランスの乱れ、水分や栄養不足も発症に関係するため、成人で発症する場合もある。今回の研究では、若年者のコロナ後遺症において、立ちくらみ症状(ふわふわする、起立時のふらつき、しゃがみ込みなど)がコロナ後遺症に関連する場合があること、起立試験や内分泌検査などが診断に有用であることが明らかとなった。
「コロナ後遺症の症状は多岐にわたり、訴えの多くは自覚症状であることから周囲から認識されにくい。立ちくらみやめまいなどの症状も、若年者のコロナ後遺症症状として注意すべき症候であり、単なる疲れや気分の問題と軽視するのではなく、症状に悩んでいる場合は薬物療法など適正な治療や症状の改善を図ることが大事だ」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・岡山大学 プレスリリース