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消化器がん患者対象の「腸内細菌叢移植療法」臨床試験開始、日本初-国がんほか

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2024年08月22日 AM09:00

国内では潰瘍性大腸炎患者に対して実施中の「抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」

国立がん研究センターは8月9日、日本初の消化器がん患者を対象とした腸内細菌叢移植()療法の安全性と有効性の検討を目的とする臨床試験を、食道がん・胃がん患者を対象に開始したと発表した。この研究は、同センター中央病院と順天堂大学、メタジェンセラピューティクス株式会社の研究グループによるもの。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

食道がんは2020年には約2.5万人が新たに食道がんと診断され、約1.1万人が亡くなっている。胃がんは日本で3番目に多いがんであり、2020年には約11万人が新たに胃がんと診断され、約4.2万人が亡くなっている。食道がんや胃がんの治療においては、免疫チェックポイント阻害薬により治療の選択肢が広がっている一方で、治療効果が得られない患者に対する新たな治療法の開発が必要とされている。

近年、腸内細菌叢の研究は大きく進展し、さまざまな疾患との関連やヒトの免疫機能への影響が明らかになっている。世界では腸内細菌叢に着目した治療の開発が進んでおり、米国や豪州では腸内細菌叢移植を応用した医薬品が、難治性クロストリジウム・ディフィシル感染症の治療薬として薬事承認されている。がん領域の腸内細菌叢移植研究では、免疫チェックポイント阻害薬による治療効果が得られない悪性黒色腫の患者に対して、腸内細菌叢移植により腸内細菌叢を調節することでがんに対する免疫が増強され、治療の奏効割合が改善される可能性が示唆されている。さらに、食道がんや胃がんを含む、さまざまながん種において、臨床試験が実施されている。

日本国内では、順天堂大学において2023年1月より、潰瘍性大腸炎患者を対象とする「抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」を、先進医療Bとして実施している。メタジェンセラピューティクスは、同先進医療の共同研究機関として、便ドナーのリクルーティング、便検体の管理、腸内細菌叢溶液の調製、品質管理などに係る支援業務を提供している。

抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法で免疫チェックポイント阻害薬の奏効率は向上するか検証

今回の試験は、順天堂大学の腸内細菌叢移植の医療技術と、その支援を行うメタジェンセラピューティクスの「腸内細菌叢移植プラットフォーム」をがん領域に応用する、日本で初めての消化器がん患者を対象とした腸内細菌叢移植の臨床試験となる。試験の結果を踏まえ、同併用療法が免疫チェックポイント阻害薬の奏効割合向上のための新たな治療選択肢として提供できるか検討するとしている。

免疫チェックポイント阻害薬無効の食道がん・胃がん患者を対象に実施

試験では、免疫チェックポイント阻害薬を含む化学療法を導入する切除不能進行または再発の食道がん・胃がん患者(予定症例数45例)を対象に「免疫チェックポイント阻害薬と腸内細菌叢移植併用療法」を実施し、安全性・有効性を検討する。対象となる患者に対し、抗菌薬3種類(アモキシシリン、ホスホマイシン、メトロニダゾール)を1週間投与した後、腸内細菌叢溶液を大腸内視鏡で1回投与する腸内細菌叢移植を実施する。

腸内細菌叢移植は健康な人の便に含まれている腸内細菌叢を、疾患を持つ患者の腸に内視鏡により注入し、バランスのとれた腸内細菌叢を構築する医療技術だ。腸内細菌叢移植の翌日以降より免疫チェックポイント阻害薬を含む治療を実施する。

なお、同試験において順天堂大学とメタジェンセラピューティクスは腸内細菌叢溶液の調製などを共同で行う。また、適格性検査を通過した「」の便から腸内細菌叢溶液を分画し、安全性試験・スクリーニングにより安全性・有効性を確保する。腸内細菌叢溶液は順天堂大学で調製、凍結保管の後に国立がん研究センターへ輸送され、腸内細菌叢移植実施時まで凍結状態で保管される。

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