溶血をコントロールすることで、貧血や疲労の改善・輸血の回避に期待
ノバルティス ファーマ株式会社は8月15日、発作性夜間ヘモグロビン尿症(以下、PNH)に対する補体B因子阻害剤「ファビハルタ(R)カプセル 200mg」(一般名:イプタコパン塩酸塩水和物、以下、ファビハルタ)を新発売したと発表した。
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PNHは、後天性の遺伝子異常により赤血球が補体の攻撃を受けやすくなる血液疾患で、補体に対する防御タンパクを失った赤血球(PNH赤血球)が血管内で補体の攻撃を受けて破壊される。病名の由来となっている早朝のヘモグロビン尿が診断時に確認できる患者は全体の4分の1~3分の1程度と多くなく、貧血・疲労感・血栓症など、患者ごとに受診時に抱える状態はさまざまだ。日本における推定患者数は約1,000人と非常にまれな疾患で、全世界でみても、100万人当たり10~20人と推定されている。PNHはどの年齢でも発症する可能性があるが、多くが30〜40歳で診断されている。溶血所見に基づく重症度分類によって中等症以上と判定された場合は、指定難病に認定される。
ファビハルタは、補体第二経路上流でB因子と結合してその活性を阻害することで、C3転換酵素の活性を阻害して第二経路の活性化を阻害する作用機序を有する補体B因子阻害剤。PNH型赤血球に対して膜侵襲複合体(MAC)形成の阻害およびC3フラグメントの蓄積(オプソニン化)を阻害し、血管内溶血だけではなく、血管外溶血も抑制する。溶血をコントロールすることで貧血や疲労の改善、輸血の回避が期待されている。同剤はPNHに対する治療薬として2023年12月にFDA(米国食品医薬品局)、2024年5月にはEMA(欧州医薬品庁)で承認を受けている。日本でも2024年6月24日、PNHを効能または効果として、製造販売承認を取得した。
補体C5阻害剤が無効なPNH成患者の単剤で使用可能な唯一の経口治療薬
今回の発売でファビハルタは、補体C5阻害剤による適切な治療を行っても十分な効果が得られないPNH成人患者のヘモグロビン値とQOLを改善する、単剤で使用可能な唯一の経口治療薬となる。血管内外両方の溶血を抑制し、ヘモグロビン値を正常値(または基準値)近くまで改善することで、貧血や疲労をはじめとするPNHに残存し得る課題に包括的に対処できることが証明されている。さらに、患者を輸血などの侵襲的な処置を伴う治療から解放することが期待される。
同社代表取締役社長のレオ・リー氏は「ファビハルタは弊社が補体系の活性を制御する最も効果的な方法について20年以上にわたって革新的な研究を推し進めた集大成です。PNHのほかにもいくつかの希少疾患を対象として開発が進められており、これからも患者のより充実した、すこやかな毎日のために、医薬の未来を描き続ける」と、述べている。
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