クロザピン初期投与時、心筋炎など生じて致命的となる場合も
獨協医科大学は8月6日、クロザピン誘発性炎症のリスク要因を明らかにし、その予防策について重要な知見を見出したと発表した。この研究は、同大精神神経医学講座の古郡規雄教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「British Journal of Psychiatry」に掲載されている。
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クロザピンは治療抵抗性統合失調症の治療において最も効果的でかつ唯一の薬剤とされている。しかし、その使用は重篤な副作用のリスクのために制限されている。特に、無顆粒球症や心筋炎といった重大な副作用が問題視されている。近年、初期投与開始から4週間以内に発生する心筋炎や肺炎などの炎症性副作用が注目されている。さらに、クロザピン関連の薬剤反応として、好酸球増多と全身症状(DRESS)症候群も初期投与および維持期間中に発生することが報告されている。
クロザピン初投与の治療抵抗性統合失調症患者512人の医療記録を後ろ向きに調査・分析
今回の研究の目的は、クロザピン投与に関連する発熱リスク要因を評価し、特に投与速度、併用薬の使用、性別、および肥満の影響について調査し、発熱リスクおよび発熱発症日への影響を明らかにした。2010年~2022年の間に日本各地の21病院で初めてクロザピンを投与された治療抵抗性統合失調症患者539人の医療記録を後ろ向きに調査し、512人が分析対象となった。患者は、東アジア人向けの国際ガイドラインに基づく投与速度に応じて、速い投与群、遅い投与群、および超遅い投与群の3つのグループに分けられた。クロザピン開始時の併用薬(抗精神病薬、気分安定薬、睡眠薬、および抗不安薬)の使用状況を包括的に調査した。
男性もしくはバルプロ酸など併用の場合、投与速度が速いほど発熱リスクが増加
研究の結果、投与速度が速いほど、男性およびバルプロ酸やクエチアピンの併用時に発熱リスクが有意に増加することが判明した。他の併用薬(オランザピン、リチウム、オレキシン受容体拮抗薬)の使用による発熱リスクの増加は検出されなかった。発熱発現日は、速い投与速度の場合に有意に早く発生した。
発熱は重篤な炎症初期兆候、早期発見・予防が重要
今回の研究結果は、クロザピンの使用に際しての重要なガイドラインを提供するものだ。発熱は重篤な炎症の初期兆候であり、早期発見と予防が極めて重要だ。特に、クロザピン投与を開始する際には投与速度を慎重に調整し、特定の併用薬の使用を再検討することが推奨される。これにより、クロザピン誘発性炎症のリスクを低減し、患者の安全性を確保することが期待される、と研究グループは述べている。
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