口腔問題は孤独感を増加させる?因果関係は明らかでなかった
東京医科歯科大学は8月7日、無歯顎(自分の歯が一本もない状態)が孤独感を増やすことが明らかになったと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科健康推進歯学分野の松山祐輔准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Dental Research」オンライン版に掲載されている。
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孤独感は、多くの健康問題のリスクを増加させることが知られている。口腔は、人と話す、笑うなどの社会的コミュニケーションを促進する重要な役割を果たす。しかし、口腔の問題が孤独感を増加させるのか、因果関係は明らかでなかった。今回の研究は、歯の喪失が孤独感を増加させるか明らかにすることを目的とした。
50歳以上英国人対象の追跡データを分析
今回の研究では、英国の50歳以上の人を対象とした追跡データ(English Longitudinal Study of Ageing:ELSA)を分析した。Wave 3(2006/2007)、5(2010/2011)、7(2014/2015)の調査に連続して2回以上参加した人を分析に含めた(7,298人から1万8,682件の回答:Wave 3の平均年齢64歳)。
無歯顎の人、天然歯維持の人に比べて、孤独感スコアが平均で0.27「増」
無歯顎の人の割合は、Wave 3(2006/2007)、5(2010/2011)、7(2014/2015)でそれぞれ12.7%、12.8%、10.6%だった。無歯顎になった人は、天然歯を維持した人に比べて、孤独感スコアが平均で0.27(95%信頼区間:0.03, 0.52)増加した。孤独感スコアは、他人から孤立していると感じる頻度など、3項目で測定。3点から9点の値をとり、数値が大きいほど孤独感を感じていることを示す。
無歯顎で「話す」「笑う」など口腔の社会的機能が低下、孤独感を増加
その他の背景要因を考慮した固定効果分析の結果、無歯顎と孤独感スコアの増加との間に有意な関連が見られた(係数=0.31、95%信頼区間:0.17, 0.46)。無歯顎になることで、話す、笑うなどの口腔の社会的機能が低下し、孤独感を増加させることが考えられる。天然歯を維持することで孤独のリスクを減らすことができるかもしれないとしている。
口腔の健康維持、高齢者の孤独感軽減の一助となる可能性
歯の喪失と孤独は、高齢者に広く見られる問題であり、公衆衛生上の重要な課題だ。歯を失うことで、会話や食事を楽しむ機会が減少し、孤独感が増加するなどの可能性が考えられる。同研究結果は、口腔の健康を維持することが、高齢者の孤独感を軽減するための一助となる可能性を示している、と研究グループは述べている。
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