肺がん治療薬EGFR-TKIで皮膚色素沈着、詳細不明
大阪公立大学は8月8日、抗がん剤のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)が皮膚の色素沈着に及ぼす影響とそのメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科色素異常症治療開発共同研究部門の片山一朗特任教授、楊 伶俐特任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Pigment Cell and Melanoma Research」にオンライン掲載されている。
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皮膚は人間の体で最大の器官であり、保護バリアとしてだけでなく、感覚の認識や体温調節など多くの重要な役割を果たしている。皮膚の色素沈着は、メラノサイト(色素細胞)とケラチノサイト(角化細胞)の複雑な相互作用によって生じる。メラノサイトは主にメラニンを生成し、これが皮膚の色を決定する。近年、表皮成長因子受容体(EGFR)が細胞の成長や傷の治癒に重要な役割を果たすことが明らかになったが、色素沈着に対する影響については、まだ不明な点が多く残っている。
EGFR-TKIは、肺がんなどの治療薬として使用されているが、皮膚に色素沈着が現れることがある。しかし、その詳細はわかっていなかった。
EGFR-TKI<ケラチノサイトで幹細胞因子・エンドセリン-1増加<メラノサイトの移動・増殖促進
研究グループは、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)であるゲフィチニブとPD153035が皮膚の色素沈着に与える影響を調査した。ケラチノサイトやメラノサイトなどの皮膚細胞に対するEGFRの発現と影響を評価した結果、EGFR-TKIがケラチノサイトでの幹細胞因子とエンドセリン-1の発現を増加させ、これがメラノサイトの移動と増殖を促進することを確認した。また、動物モデルを用いた実験では、ゲフィチニブを塗布することで皮膚の色素沈着が増加することが示された。
脱色素性疾患や白斑に対し局所EGFR-TKI治療が有望なアプローチとなる可能性
今回の研究結果は、EGFR-TKIが皮膚の色素沈着を制御する新たなメカニズムを解明するものであり、色素異常症の治療に新たな可能性を示唆している。特に、局所的なEGFR-TKI治療が脱色素性疾患において有望なアプローチとなり得ることが示された。「今後は、これらの知見を基に、脱色素性疾患や白斑などの治療法開発を進めていく予定」と、研究グループは述べている。
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