HCC患者173人を対象にインターネット調査を実施
アストラゼネカ株式会社は8月7日、肝細胞がん(HCC)患者調査の結果、生活習慣病が起因の肝細胞がんはウイルス性肝炎が起因の場合と比較して、より進行度の高い状態で発見されている可能性があると発表した。
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肝がんは国内のがんによる死因の第5位であり、2023年は約3万9,000人が診断され、約2万4,000人が死亡している。中でもHCCは日本において最も一般的な肝がんの型であり、約90%がHCCだ。HCCの主な原因はB型肝炎ウイルスまたは、C型肝炎ウイルスの感染であり、その他には多量飲酒によるアルコール性肝障害、メタボリックシンドロームに起因する非アルコール性脂肪肝炎などがある。
なお、HCCの治療は、転移の有無、腫瘍の大きさや数などによって異なり、早期であれば切除手術やラジオ波焼灼療法などの局所療法などの根治的な治療が可能だが、進行している場合には薬物治療が選択肢となる場合がある。
同社は2024年4~5月、HCCと診断されたことのある173人を対象に、治療の種類や治療中の体調変化に対する行動などについて調べるインターネット調査を実施した。
生活習慣病が起因のHCC患者のほうが、より進行度の高い状態で診断されている
HCCの一番の原因であるC型肝炎の治療が進んだこともあり、非B非C型肝炎と呼ばれる生活習慣病が起因のHCC患者が増えていると言われている。同調査で、診断された時期でウイルス性肝炎の罹患歴の有無を比較したところ、2010年以前は74%が罹患歴のある患者だったが、2011年から減少し始め、2021年以降では26%であることがわかった。
次に、HCCの治療について調べた。初回治療の内容をB型C型肝炎の罹患歴の有無で比較したところ、罹患歴のない患者のほうが薬物治療を受けていた割合が高いことが明らかとなり、B型C型肝炎の罹患歴のない=生活習慣病が起因のHCC患者のほうが、より進行度の高い状態で診断されていることが推測された。
患者が体調変化を感じても我慢できる範囲と思い、医師への報告が遅れていることが判明
HCCは再発率が高く、切除手術を行っても70%以上が3年以内に再発する。再発(転移含む)した場合には、新たな治療を検討しなくてはならない。そこで、初回治療から次治療(2番目)開始までの期間において、B型C型肝炎の罹患歴の有無で比較したところ、罹患歴がある患者では31.9か月、罹患歴がない患者では12.0か月だった。これは、罹患歴のない患者のほうがより進行した状態でHCCと診断されており、そのために再発に伴う次治療までの期間が短くなった可能性が考えられた。
さらに同調査では、HCC治療中に副作用などの体調の変化を感じているにもかかわらず、患者の64%が「次の診療日を待って報告」していることが明らかとなった。また、医療従事者に迅速に報告(電話連絡)しなかった理由としては、「我慢できる範囲だと思った」が57%と最も多く、次いで「急いで報告すべき体調の変化や症状だと思わなかった」の51%だった。
これらの結果から、患者が症状などの体調変化を感じても報告が遅れているという課題が浮き彫りとなった。HCC治療に用いられる、免疫チェックポイント阻害剤を含む薬物治療においては、体調の変化や症状を感じた際には迅速に対応することが重要だが、実際は次の診療日まで待つ患者も多いため、速やかに医療従事者に連絡することをさらに周知する必要性が示唆された。
医師に報告すべき症状やタイミングなど、解決すべき課題が浮き彫りに
今回の結果を受け、同調査の監修医師で国立がん研究センター中央病院の奥坂拓志肝胆膵内科長は「生活習慣病が起因となるHCCが増えつつある中、今回の調査でも、B型C型肝炎罹患歴のないHCC患者の割合が増加していることが示された。また、これらの患者は罹患歴を有する患者と比べて初回から薬物治療を受ける割合も多いことが明らかとなった。薬物治療中の体調変化時の医療従事者とのコミュニケーションは特に重要だが、報告すべき症状やタイミングなどの解決すべき課題も示唆された」と、述べている。
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・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース