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先天性四肢形態異常、妊娠中母体血中重金属・微量元素との関連を調査-北大ほか

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2024年08月16日 AM09:00

動物実験ではカドミウム・マンガン・セレンばく露で四肢形態異常を生じる報告あり、ヒトでは?

北海道大学は8月6日、エコチル調査の母児約9万組のデータを用いて、妊娠中の重金属・微量元素ばく露と生まれた子どもの先天性四肢形態異常との関連について解析した結果を発表した。この研究は、同大エコチル調査北海道ユニットセンターの池田敦子教授、ユニットセンター長の岸玲子特別招へい教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Environmental Health and Preventive Medicine」に掲載されている。

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

動物実験では、カドミウム、マンガンあるいはセレンばく露で四肢形態異常を生じる報告があるが、ヒトでの報告はほとんどなかった。そこで、今回の研究では、妊婦の血中重金属濃度と生まれた子どもの先天性四肢形態異常との関連を明らかにすることを目指した。

エコチル調査参加の妊婦から生まれた先天性四肢形態異常の子を解析

今回の研究は日本の出生コホートである「エコチル調査」に参加した妊婦から生まれた単胎児のうち、先天性形態異常のない子ども(n=8万9,794)と先天性四肢形態異常がある子ども(n=369)を解析対象とした。妊娠中期から妊娠末期の母体血清中の鉛、カドミウム、水、セレン、およびマンガンを測定。先天性形態異常は、出生時または出生後1か月間の診療記録情報、あるいは生後2歳までの疾患登録情報から確認した。母体血清中の重金属濃度を対数変換した連続数モデルおよび四分位で4群に分け、最低濃度群に対する上位濃度群の先天性四肢形態異常の有病率に関して、交絡要因を調整した多変量解析で検討した。測定した5元素の混合ばく露による影響も検討した。

子の先天性四肢形態異常との統計的有意な関連は認められず

実施したいずれの統計学的モデルにおいても、生まれた子どもの先天性四肢形態異常との統計的有意な関連は認められなかった。同研究で検出された妊婦のばく露レベルでは、生まれた子どもの先天性四肢形態異常の発生には影響しないことが明らかになった。

器官形成期のばく露を正確に反映していない可能性など、研究の限界あり

今回の研究の限界として、重金属・微量元素を測定した血液は妊娠中後期の血液であり、器官形成期のばく露を正確に反映していない可能性がある。また、両親の先天異常の有無など、調整できていない未知の交絡因子が存在する可能性を否定できない。引き続き、妊婦がさらされる重金属・微量元素と先天性四肢形態異常以外の子どもの健康との関係について明らかとなることが期待される、と研究グループは述べている。

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