多職種がワンチームで日本オリジナル「脊椎がん拡大根治手術」を施行
名古屋市立大学は8月6日、下大静脈を合併切除する「脊椎がん拡大根治手術」に世界で初めて成功したと発表した。同手術は、同大病院 整形外科の村上英樹主任教授を中心に、整形外科、心臓血管外科、泌尿器科、消化器外科の合同手術として、麻酔科と小児科の協力のもと行われた。
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脊椎がんに対し、がんに侵された脊椎を丸ごと切除する根治手術(腫瘍脊椎骨全摘術)は1989年に考案された日本オリジナルの手術だ。現在、日本で最も多く施行されている術式で、日本唯一の手術指導者が村上英樹主任教授だ。同氏はこの手術をさらに改良し、脊椎がんの切除と同時に全身のがん免疫療法が可能となる画期的な手術術式「次世代腫瘍脊椎骨全摘術」を2010年に考案し、手術概念を飛躍的に発展させた。
今回の小児患者は脊椎がんがすでに下大静脈に浸潤しており、手術の実施は絶望的な状態にあった。同患者を救う唯一の手段は根治手術しかなく、多職種の医師と医療スタッフで議論が重ねられた。その結果、それぞれの専門家の経験や技術を結集すれば根治手術も可能との結論に至り、綿密な手術計画を立て、世界初となる手術が行われた。
脊椎を下大静脈ごと一緒に根治切除することに成功
1回目の手術では、腹側から腫瘍に侵された下大静脈の両端を切断し、その間を人工血管でつないだ。さらに腫瘍周囲の大動脈と腎動脈を剥離し、腫瘍に付着している横隔膜と大腰筋を切離した。手術時間は6時間30分だった。
その10日後に2回目の手術が施行された。背中から脊髄神経の周囲を剥離して神経を温存しつつ、第12胸椎、第1腰椎、第2腰椎の3つの脊椎を下大静脈ごと丸ごと一塊にして切除した。切除後は金属インプラントで脊椎を再建。手術は9時間30分だった。下大静脈まで浸潤した脊椎がんに対し、脊椎を下大静脈ごと一緒に根治切除した報告は世界的に無く、世界初の成功例となった。
2日間・計16時間の手術、小児患者は順調に回復
今回、脊椎3つにまで広がり、さらに下大静脈にまで浸潤する小児の骨肉腫に対し、下大静脈も同時に切除するという、これまでに例のない脊椎がんの拡大根治手術に世界で初めて成功した。2日間、計16時間に及ぶ大手術だったが、患者は現在、順調に回復してきているという。
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・名古屋市立大学 プレスリリース