アテゾリズマブ・ベバシズマブの治療有効性は3割程度
岡山大学は8月6日、肝細胞がんにおいて免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による治療を行った場合の生存予測に有用な自己抗体として抗PD-1抗体を同定したと発表した。この研究は、同大学術研究院医歯薬学域(医)肝・腎疾患連携推進講座の高木章乃夫特任教授、同大病院光学医療診療部の松本和幸講師、同大学術研究院医歯薬学域(医)消化器肝臓内科学の大塚基之教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Gastro Hep Advances」のArticles in Pressとして掲載されている。
ヒトの免疫力にはがんをやっつける力があるが、がんは進行するにつれ、ヒトの免疫力を低下させるPD-1/PD-L1などの免疫抑制作用を持つ分子を自分にも免疫細胞にも発現させ、巧みに免疫力から逃避する。免疫チェックポイント阻害剤はこれらの免疫抑制分子を抑えつける抗体薬で、ヒトの抗がん免疫力を回復させてがんを抑え込む。進行肝細胞がんにおいてもアテゾリズマブ(免疫チェックポイント阻害剤:抗PD-L1抗体)/ベバシズマブ(血管内皮細胞増殖因子抗体製剤:抗VEGF抗体)併用療法が治療として確立されてきた。しかしその有効性は他のがんと同様に3割程度にとどまっている。その他にも治療選択肢が複数ある中で、最良の予後を得るために、各治療における予後予測が重要だ。すでにさまざまな報告があるが、まだ不十分でより良い予後予測マーカーの開発が強く望まれている。
抗PD-1自己抗体の抗体価が低いほうが予後良好
今回研究グループは、抗PD-1抗体が治療前の肝細胞がん患者血液中に存在すること(抗PD-1自己抗体)、そしてこの自己抗体の多寡がアテゾリズマブ/ベバシズマブ併用療法の生命予後に関係していることを発見した。また、抗PD-1自己抗体の抗体価が低いほうが予後良好ということも判明した。
「さまざまながん種に適応が拡大し続けている一方で、有効な症例が3割程度に限られていることから、有用性を早く評価することが重要となっている免疫チェックポイント阻害剤の予後予測に有用な可能性がある自己抗体を同定した。これから肝細胞がんでの検討、その他のがん種での検討も行って、進行がんの治療選択の最適化を目指す研究を進めていきたい」と、研究グループは述べている。
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・岡山大学 プレスリリース