進行性の失明生じるDOA、ドミナントネガティブな「DOAプラス」と区別できる実験系が必要
新潟大学脳研究所は8月5日、常染色体優性視神経萎縮症(DOA)のショウジョウバエモデルを作製したと発表した。この研究は、同大研究所脳病態解析分野の杉江淳准教授、新田陽平特任助教、小坂二郎特任助教と、同大医歯学総合研究科眼科学分野の植木智志講師らとの研究グループによるもの。研究成果は、「eLife」誌に掲載されている。
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DOAは、主にOPA1ミトコンドリアダイナミン様GTPase(OPA1)遺伝子の変異によって引き起こされる視神経節細胞およびその軸索の変性により進行性の失明をもたらす遺伝性疾患。OPA1はミトコンドリア内膜に存在するダイナミン様GTPaseをコードしている。DOAは眼の症状に加え、多臓器にわたる症状を呈することがあり(DOAプラス)、DOAプラスはGTPaseドメインの点突然変異によって生じることが多く、これらはドミナントネガティブ効果を持つとされている。GTPaseドメインの変異が必ずしもDOAプラスを引き起こすわけではない。そのため、DOAとDOAプラスを区別する実験系が求められていた。
ショウジョウバエdOPA1遺伝子機能喪失変異、DOA視神経変性の病態を模倣
今回の研究では、ショウジョウバエのdOPA1遺伝子の機能喪失変異がDOAで観察される視神経変性の病態を模倣できることを発見した。この変性はヒトのOPA1(hOPA1)遺伝子を発現させることで救済でき、hOPA1がショウジョウバエのシステムにおいてdOPA1と機能的に置き換え可能であることを示した。
hOPA1機能喪失変異とドミナントネガティブ変異の区別が可能に
一方で、これまでに同定された疾患変異はdOPA1欠損表現型を改善しないことが確認できた。この結果から、hOPA1の変異の病的意義が機能喪失型であることを検証できることがわかった。さらに、dOPA1変異体の視神経にWTおよびDOAプラス変異型hOPA1を発現させることで、DOAプラス変異が救済を抑制することを観察し、hOPA1の機能喪失変異とドミナントネガティブ変異を区別することが可能となった。
さらに多くのhOPA1遺伝子変異機能解析で、DOAとDOAプラスのメカニズムの解明に期待
この研究により確立されたショウジョウバエモデルを用いて、さらに多くのhOPA1遺伝子変異の機能を解析することで、DOAとDOAプラスのメカニズムの解明が期待される。これにより、個々の変異に対する最適な治療法の開発が進む可能性がある。また、このモデルは、新規治療薬のスクリーニングや、DOAの病態の進行を抑えるための新しい戦略の検証に役立つと考えられる、と研究グループは述べている。
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・新潟大学脳研究所 プレスリリース