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唾液腺がん、新規抗アンドロゲン療法抵抗性に関連の遺伝子異常判明-国がんほか

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2024年08月14日 AM09:10

悪性度高い唾液腺導管がん、一部の組織型でARが強く発現

国立がん研究センターは8月5日、(AR)陽性唾液腺がんに対する抗アンドロゲン療法(アパルタミド+)の臨床的有用性の検証に加え、その治療による利益が得られる患者を特定するための腫瘍検体や血液検体を用いたバイオマーカー解析を行う研究を実施したと発表した。この研究は、同センター中央病院の本間義崇 頭頸部・食道内科医長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Cancer Research」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

唾液腺は耳下腺・顎下腺・舌下腺と呼ばれる「大唾液腺」と、口腔粘膜内に広く分布する「小唾液腺」に分類される。これらの唾液腺を発生母地とする悪性腫瘍の総称を「唾液腺がん」と呼ぶ。唾液腺がんは、頭頸部領域に生じる悪性腫瘍の約6%を占める希少がんであり、年間発症数は10万人当たり1人程度とされている。さらに、その種類(組織型)は20種類以上に及ぶことから、唾液腺がんは超希少がんの集合体であると言える。日本人に最も多い組織型は「」であり、悪性度の高い腫瘍になる。

唾液腺導管がんを主とする一部の組織型においてアンドロゲン受容体(AR)が強く発現することが知られている。アンドロゲンは精巣と副腎から産生される男性ホルモンであり、視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)と、GnRHの刺激で下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(Gn)によってコントロールされている。アンドロゲンが作用するARはさまざまな細胞の細胞質内に存在し、前立腺がんをはじめ色々ながんで発現が認められる。

前立腺がんで用いられる新規抗アンドロゲン療法、AR発現の唾液腺がんへの有効性は?

抗アンドロゲン療法は前立腺がんで治療開発が始まった。まず、GnRHアゴニストを用いたアンドロゲン遮断療法(ADT)の有効性が示され、その次に第一世代のAR阻害薬であるビカルタミドをADTと併用する複合アンドロゲン遮断療法(CAB)がより有効であることが明らかとなり、広く用いられてきた。現在では、より効果的にARからの腫瘍増殖シグナルを阻害する次世代のAR阻害薬とGnRHを併用する新規の抗アンドロゲン療法の高い有効性が示され標準治療となっている。

ARが発現している唾液腺がん患者に対しても、過去の報告からビカルタミドとGnRHアゴニストを併用したCABの有効性が示され、前立腺がんと同様に次世代のAR阻害薬を用いたCABが有効ではないかと考えられてきたが、臨床試験はこれまで行われていなかった。

国内で臨床試験を実施、25%で奏効・50%で臨床的に有用な効果を認める

そこで今回研究グループは、国際医療福祉大学三田病院や東京医科大学をはじめとする日本国内の複数の施設と協力して立ち上げから関わり、次世代のAR阻害薬であるアパルタミドとGnRHアナログであるゴセレリンを併用する新規の抗アンドロゲン療法がARを発現している唾液腺がんに有効であるかどうかを調べる臨床試験を、ヤンセンファーマ株式会社主導の治験として実施した。この研究は、唾液腺がんに対する新規抗アンドロゲン療法の臨床的有用性を検証した日本初の治験となる。

結果として、アパルタミドとゴセレリンの併用療法が投与された、切除不能または再発のAR陽性唾液腺がん患者24人において、6人(25%)に奏効を認め、12人(50%)に臨床的に有用な効果(半年以上の治療効果の持続、または奏効あり)が示された。また、長期フォローアップデータ(観察期間中央値:33.1か月)における、無増悪生存期間中央値(治療を受けた患者のうち、がんが大きくならずに生存している患者の割合がちょうど50%となっている時点)は7.5か月、全生存期間中央値(治療を受けた患者のうち、生存している患者の割合がちょうど50%となっている時点)は未到達(データ解析時点で生存している患者の割合が50%以下になっていない)、2年生存割合は70.8%だった。さらに、腫瘍組織におけるAR発現割合が70%以上かつ全身治療が行われていない患者11人において、6人(54.5%)に奏効を認め、その無増悪生存期間中央値は9か月、全生存期間中央値は未到達で、2年生存割合は81.8%だった。

MYC/RAD21遺伝子増幅を検出の患者、抗アンドロゲン療法効果乏しいと判明

通常ARが強く発現する「唾液腺導管がん」と呼ばれる悪性度の高い組織型の腫瘍に着目して行ったバイオマーカー研究の結果、遺伝子パネル検査でMYCやRAD21という遺伝子の増幅が検出された患者における抗アンドロゲン療法の効果が乏しいという結果が示された。また、一部の患者の治療終了時の血液検体では上記の遺伝子増幅が検出されていたことから、これらの遺伝子異常が抗アンドロゲン療法の治療抵抗性に関わっている可能性が示唆された。本バイオマーカー研究は、東京医科大学との共同研究として実施された。

今後の唾液腺がんを対象とした抗アンドロゲン療法治療開発にも役立つと期待

今回の研究の結果、AR陽性唾液腺がんに対して新規抗アンドロゲン療法を投与する際に、腫瘍検体の検討により、高い効果が予測される患者が同定される可能性が示唆された。

この発表時点では、アパルタミドおよびゴセレリンは、唾液腺がんに対する効能または効果を有しておらず、保険適用外となるが、「本研究で得られた知見は、2024年2月から日本で使用可能となった抗アンドロゲン療法(ビカルタミド+リュープロレリン)を実施する際の治療適応の検討、そして今後実施されるAR陽性唾液腺がんを対象とした抗アンドロゲン療法の治療開発に役立つことが期待される」と、研究グループは述べている。

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