床材は国ごとに文化・気候・歴史などの影響あり、日本は「畳」など多様な床材
北海道大学は8月2日、エコチル調査の約7万5,000人のデータを用いて床材と小児喘息の発症について解析した結果、妊娠中の母親の自宅が築10年以上の古い住居での床材が畳である場合には、その子の4歳までの小児喘息と一定の関連性が認められたが、リスクは非常に低く小児喘息としての高いリスクを示すものではなかったと発表した。この研究は、同大エコチル調査北海道ユニットセンターの岩田啓芳特任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載されている。
子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、エコチル調査)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。
床材と喘息の関係については、世界中で研究がなされてきた経緯がある。一方、床材は個々の国によって、文化・気候・歴史などに影響を受けており、特に、日本では畳も含めて床材が多様に存在する。
エコチル研究参加の妊婦の子7万4,950人を4歳まで追跡
そこで今回の研究は、妊娠中に過ごした自宅における床材の種類によって、小児喘息に影響を与えるかどうかを評価することを目的として解析を行った。今回の研究はエコチル研究に参加した妊婦のうち、2011~2014年に生まれた子ども(7万4,950人)を4歳まで追跡し、回帰分析で解析した。
妊娠中「築10年以上+畳」は4歳までの小児喘息と一定の関連あるも、リスク非常に低い
研究の結果、母親が妊娠中に過ごした自宅の床材の中で特に、築10年以上経過した古い住居にある畳と小児喘息との一定の関連性が認められた。しかし、当解析にてリスクはオッズ比1.1と低く、喘息としての高いリスクを示したものではない。
築10年未満の住居、畳と小児喘息との関連性は認められず
さらに、上記関連性は10年以上の古い住居では認めたものの、築10年未満の比較的新しい住居では認められなかった。また、同研究は現在の子どもの住居床材と喘息との関係を直接評価したものではない。
引き続き、小児喘息に影響を与える環境要因を明らかにすることが期待される、と研究グループは述べている。
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・北海道大学 プレスリリース