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男性不妊症、精液使わず血液でリスク判定するAI予測法開発-東邦大ほか

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2024年08月08日 AM09:10

晩婚化で増加傾向の男性不妊症を診察可能な医師は少ない

東邦大学は7月31日、精液検査なしで男性不妊症をスクリーニングするAIモデルを構築したと発表した。この研究は、同大医学部泌尿器科学講座の小林秀行准教授、上谷将人助教、山辺史人講師、三井要造講師、中島耕一教授、永尾光一教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本の2023年の人口動態統計が発表され、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.20で過去最低を更新した。また、2023年における外国人を除く出生数は前年比5.6%減の72万7,277人だった。出生率の低下は、未婚化や晩婚化などさまざまな要因が影響しており、中でも晩婚化に伴う不妊症の増加が著しく、不妊症の原因となる割合は女性と男性50:50であり、女性不妊症だけでなく男性不妊症に関しても増加傾向であり検査および治療を行うことは出生率の改善目的のために急務となっている。

一般社団法人日本生殖医学会が認定する生殖医療専門医の中で、女性不妊症を専門に診察する婦人科医が900人以上存在するのに対して、男性不妊症を専門に診察する泌尿器科医は全国で79人(2024年4月現在)と非常に少ない状況である。つまり、国内で男性不妊症を十分に検査および治療が行える体制は整っていないという課題が存在している。男性不妊症の診断に必須と言われる精液検査は、不妊治療を専門にする医療機関以外では採精室や、精液検査に必要な機器が完備されておらず気軽に行うことができない。また、精液検査自体に抵抗を感じる男性や、自身に不妊症の可能性があると考えもしない男性も多く、男性不妊症の検査は十分に行えていない課題が存在する。そのため、研究グループは、精液検査に頼らずに男性不妊症を簡便にスクリーニングする方法の開発を目指した。

男性不妊症検査データから、総運動精子数・ホルモン検査値をAI学習させ予測モデル構築

2011年から2020年に男性不妊症の検査目的で精液検査とホルモン検査を受けた3,662人の臨床データを収集し、精液検査では精液量、精子濃度、精子運動率を、ホルモン検査では、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、プロラクチン(PRL)、テストステロン(T)、エストロゲン(E2)を測定し、またT/E2を計算し追加した。精液検査の結果から、総運動精子数(精液量×精子濃度×精子運動率)を算出し、WHOの「WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen 第6版」(2021年)の精液検査の基準値に基づいて、総運動精子数9.408×106(1.4mL×16×106/mL×42%)を正常下限値と定義した。判定結果については、個々の患者について算出された総運動精子数9.408×106を上回っていれば「正常:0」、下回っていれば「異常:1」と設定した。これらの総運動精子数、ホルモン検査などの結果を、ノーコードの予測分析AIツール、Prediction One(ソニービズネットワークス株式会社)、AutoML Tables(現:Vertex )(Google)に学習させ、AI予測モデルを構築した。Prediction Oneに基づくAI予測モデルの精度(正解率)は74.42%、AutoML Tablesでもほぼ同様の精度で74.2%だった。

構築したモデル、非閉塞性無精子症の不妊リスクを高精度に予測

次に、作成したAI予測モデルが実際に男性不妊症をどの程度正確に判定できるか、2021年と2022年の臨床データを用いて検証した。2021年の精液検査とホルモン検査が揃っている患者188人のデータを用いて、Prediction Oneで作成したAI予測モデルにより男性不妊のリスク判定を行ったところ、精度は57.98%だった。2022年の患者データでも同様の検証を行い、精度は68.07%だった。ただし、(2021年の患者188人中24人、2022年の患者166人中28人)に限定すると、100%の正解率で男性不妊リスクありと判定した。

男性不妊症のスクリーニングが身近になり、早期治療にもつながると期待

今回のAI予測モデルは、重度の無精子症である非閉塞性無精子症の予測精度が特に高かった。AI予測モデルで異常であれば非閉塞性無精子症である可能性もあるため、精液検査や適切な治療などを受けるきっかけになる。

研究グループは、このAI予測モデルはあくまで精液検査の前段階に行う1次スクリーニングとしての位置づけで、精液検査を代替えするものではない、としながらも、「将来的に不妊専門施設以外の検診センターでも男性不妊症のリスク判定が行えるようになれば、男性不妊症のスクリーニングが身近になり、詳しい検査や治療を行うきっかけとなって早期に治療を行うことで、妊娠率の向上にも寄与すると考えられる」と述べている。

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