同大病院の後遺症外来受診患者対象に就労状況の変化を調査
岡山大学は7月30日、同大病院のコロナ後遺症外来(コロナ・アフターケア外来)を受診した患者のうち、雇用されている人の就労状況の変化について研究を行い、その結果、54%に何らかの就労への影響がみられていたことがわかり、中でも若年者・高齢者では退職率が高い傾向を認めたと発表した。この研究は、同大病院総合内科・総合診療科の松田祐依医員と、同大学術研究院医歯薬学域(医)総合内科学の大塚文男教授らのグループによるもの。研究成果は「Journal of Clinical Medicine」に掲載されている。
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新型コロナウイルス感染症は、回復後も倦怠感などの症状が長引くことがあり、コロナ後遺症といわれている。コロナ後遺症により、これまでの生活や仕事を続けられない場合があり、社会的な問題となっており、病態の解明や治療法の開発が望まれている。
同大病院のコロナ・アフターケア外来では、2021年2月15日の開設からこれまで1,000人を超える新型コロナ後遺症患者を診療してきた。今回の研究では、同外来受診者のうち雇用されている人の就労状況の変化をまとめて報告した。
54%で就労に影響、雇用状況の変化はオミクロン株期の感染による後遺症で増加
2021年2月~2023年12月までの間に受診した患者846人のうち、就労に関連する年齢層(18歳以上65歳未満)で、非雇用者などを除外した545人について就労状況の変化を調査した。雇用されている後遺症の患者のうち、54%にあたる295人において、就労への影響がみられた。その内訳は、休職(1か月以上の休職)220人、退職(休職期間によらず退職)53人、時短勤務22人だった。就労への影響は女性で多く、若年者、高齢者では退職率が高い傾向を認めた。
また、雇用状況の変化は、デルタ株期に感染した後遺症と比べ、オミクロン株期の感染による後遺症で58%と増加し、雇用に影響した患者さんの64%で収入が減少していた。雇用状況に影響のあった後遺症患者では、特に倦怠感・不眠の症状が有意に多く、生活の質の悪化、うつ状態の悪化に関与していた。
コロナ後遺症に対する職場からの理解が重要
研究成果により、コロナ感染後も就労へ影響するほど症状のある方が過半数にのぼることがわかり、症状回復のためには適切な療養期間をとることが重要であると考えられた。
「コロナ後遺症の症状は、本人にとっては仕事が続けられないほどの症状でも、周囲からはその症状がわかりにくいことが大きな特徴といえる。後遺症による雇用の変化は、経済状況や患者の生活の質にも影響するため、コロナ後遺症への周囲の理解、特に職場からの理解が重要と考えられる」と、研究グループは述べている。
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