食事由来のタウリンと体力に関する報告はほとんどなかった
国立長寿医療研究センターは7月25日、食事からのタウリン摂取量が多いと、8年後の脚の筋力(膝伸展筋力)が維持される傾向にあることを見出したと発表した。この研究は、同センター老化疫学研究部の大塚礼部長らの研究グループ、大正製薬株式会社、北翔大学との共同研究によるもの。研究成果は、「Frontiers in Nutrition」に掲載されている。
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魚介類、肉類、卵類等の食品から日常的に摂取されるタウリンは、ヒトの体重の約0.1%を占め、抗酸化/浸透圧調節等の多様な機能を有していることが知られている。また、マウスやサル等の哺乳類の研究では、タウリンの摂取が健康寿命を延長するといった報告もあり、近年注目されている。しかし、食事由来のタウリンと体力に関する報告はほとんどなく、タウリンが体力維持に関連するかは明らかではなかった。
40歳以上1,454人対象、食事からのタウリン摂取量と体力指標を解析
同センターは、老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)を行っている。この研究は、愛知県大府市・東浦町の地域住民から性・年代別に層化無作為に選出された40歳以上の中高年者を対象に、医学・心理・運動・身体組成・栄養など多角的な観点から老化・老年病予防策を検討するコホート研究である。今回NILS-LSA第3次調査(2002~2004年、ベースライン)と約8年後に行われた第7次調査(2010~2012年)の参加者のうち、両調査において食事秤量記録調査と体力測定を実施した40歳以上の男女1,454人を対象に、ベースラインのタウリン摂取量と体力指標(膝伸展筋力、長座位前屈、閉眼片足立ち、最大歩行速度)の8年間の変化量との関連を縦断的に解析した。なおタウリン摂取量は、2010年版日本食品標準成分表(1,878品目)のうち751品目(海藻類、魚介類、肉類、卵類、牛乳・乳製品の5つの食品群を含む)から作成したタウリン含量表を用いて算出した。
65歳以上でも高摂取群では膝伸展筋力の減少幅が小さい
その結果、食事からのタウリン摂取量が多いほど膝伸展筋力が増加していることが見出された。65歳以上では、タウリン摂取量の多寡にかかわらず、膝伸展筋力は低下する傾向を認めたが、タウリン高摂取群においては膝伸展筋力の減少幅が小さく、タウリンの摂取量が多いと筋力が維持される傾向が示された。
タウリンの約80%を魚介類から摂取という結果
これらの結果より、タウリンの摂取は中高年者の膝伸展筋力、すなわち脚の筋力の維持につながる可能性が示唆された。今回の解析集団では、食事由来のタウリンの約80%は魚介類からの摂取だったが、近年、日本では魚介類摂取量が低下しており、タウリン摂取量も低下傾向にある。
「高齢化が進む日本において、生涯を通して脚の筋力を維持することは、社会活動や運動習慣を保持し、健康で豊かな生活をおくるために重要な要素だ。魚介類の摂取等によりタウリンを摂取することが筋力維持に良い影響を与える可能性が示唆されたことから、魚介類を取り入れた栄養バランスの良い食生活を継続することが健康寿命の延伸に重要と考えられる」と、研究グループは述べている。
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