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子の身体活動促進には、妊娠中から母親が身体活動を高めることが重要な可能性-東北大

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2024年07月29日 AM09:30

どの時点の母親の身体活動が最も子どもに影響するのか

東北大学は7月20日、宮城県の母子を妊娠確認時から追跡したデータ(1,067組)を分析した結果、妊娠前から産後5.5年の身体活動レベルが最も高い母親のグループの子どもは、最も低い母親のグループと比較して、身体活動レベルが高いと判定される確率が3.72倍高いことが示されたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科運動学分野の門間陽樹准教授、大学院生の山田綾氏、永富良一教授(現・産学連携機構)、エコチル調査宮城ユニットセンターの大田千晴教授らのグループによるもの。研究成果は、「Journal of Epidemiology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

昨今、子どもの肥満や体力不足が問題となっている。運動不足はこれら小児肥満や体力不足の一因であると考えられている。加えて、子どもの頃の運動量は、将来の生活習慣病の発症リスク等にも関連することが報告されており、子どもの頃に活動的な生活習慣を身に付けることが重要だ。

子どもが生活習慣を形成していく際、親の生活習慣の影響を受けるとされている。母親は子どもと接する時間が長いといわれ、子どもへの影響が強いことが予想される。これまでの報告では、妊娠前から育児期(6歳)における各時点の母親の身体活動が、乳児期~学童期(6~9歳)までのさまざまなフェーズにおける子どもの身体活動と関連することが報告されている。しかし、これらの研究は各時点の身体活動の影響を個別に断片的に検討したものだ。・出産・育児というライフイベントは、母親の身体活動を劇的に変化させ、身体活動が低くならざるを得ない状況が生じる可能性がある。そのため、一時点の影響に一喜一憂するのではなく、・出産・育児を期間全体として身体活動の影響を捉えることが、母親の実情に配慮した分析になると考えられる。さらに、各時点の影響を同時に検討することにより、どの時点の母親の身体活動が最も子どもに影響するかを明らかにすることができる。

1,067組の母子対象、妊娠前~産後5.5年5つの時点で母親を、子は5.5歳時に調査

研究グループは、環境省による子どもの健康と環境に関する全国調査()の一環としてエコチル調査宮城ユニットセンターが独自に実施する追加調査に参加同意した1,067組の母子を対象に研究を行った。母親の身体活動は、妊娠前、妊娠中、産後1.5年、3.5年、5.5年の5つの時点で質問票を用いて測定し、各時点の身体活動カテゴリーを得点化したのち、5時点の合計得点に基づいて人数が均等になるように4グループに分類した(累積身体活動レベル)。子どもの身体活動は5.5歳時に質問票で測定し、子どもが1日60分の身体活動を週5日以上実施するオッズ比を算出した。

妊娠中と産後5.5年時の母親の身体活動レベルは、子どもの身体活動レベルと関連

その結果、妊娠前から産後5.5年の身体活動の合計得点が最も高い母親のグループの子どもは、最も低い母親のグループと比較して、1日60分の身体活動を週5日以上実施するオッズ比が3.72倍高く、期間を通して母親の身体活動レベルが高いほど子どもの身体活動レベルも高いことが確認された。さらに、各時点の検討では、妊娠中(低vs高のオッズ比:2.24)および産後5.5年(低vs高のオッズ比:2.38)において、母親の身体活動レベルが高いほど子どもの身体活動レベルも高いことが示された。一方、妊娠前、産後1.5年および3.5年については、関連は認められなかった。

妊娠・出産・育児による女性の身体活動レベルの長期的な変化も判明

また、研究の副次的な結果として、妊娠・出産・育児による女性の身体活動レベルの長期的な変化を定量的に記述することに成功した。日本の身体活動ガイドライン(「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」)の基準を達成している者の割合は、妊娠に伴って減少し、その割合は出産後も妊娠前のレベルには戻らないことが明らかになった。ライフイベントに伴う若年女性の長期的な身体活動の変化を示す結果は大変貴重な報告といえる。

身体活動向上の取り組み、学校だけでなく家庭での実践も重要であることを示唆

研究では、母親の妊娠期から出産後までの身体活動が子どもの身体活動に影響を及ぼすことを明らかにした。また、妊娠・出産・育児に伴って母親の身体活動レベルは変化するものの、子どもの身体活動レベルの向上には、妊娠前から育児期を通して身体活動レベルを高く保つことが重要である可能性が示された。さらに、母親と子どもの身体活動の関連は、一貫して認められるわけではないことも示され、子どもが5.5歳時点の母親の身体活動だけではなく、タイミングが離れた妊娠中の身体活動も関連することを明らかにした。

「子どもの身体活動不足は小児肥満や体力不足の一因である。現在、子どもの身体活動不足の解消を目指して、宮城県などでは2023年度より体力・運動能力向上センターを設置して、学校内での身体活動向上の取り組みが積極的に行われている。研究成果は、学校内だけではなく、家庭内での取り組みの重要性を示すものである。また、この研究をもって妊娠中のアクティブな生活習慣を推奨するものではない」と、研究グループは述べている。

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