Ang-2/VEGF-A関与の経路を遮断する抗体薬、100か国近くで既承認
エフ・ホフマン・ラ・ロシュは7月18日、糖尿病黄斑浮腫患者(DME)を対象に、ファリシマブ(製品名:バビースモ)の長期安全性および忍容性を評価した第3相RHONE-X試験の4年データを発表した。成果は、米国網膜専門医学会議(ASRS)2024年次総会で発表されている。
DMEは、世界全体において、約2900万人が罹患しているとされる疾患で、治療せずに放置すると失明や生活の質の低下につながる。損傷した血管からの漏出とそれに伴う浮腫が黄斑部、すなわち読書や車の運転に必要とされる明瞭な視力を司る網膜の中心領域に生じる。糖尿病の有病率が上昇するにしたがって、DMEの患者数は増加することが予想されている。
バビースモは、眼科領域において承認された初のバイスペシフィック抗体薬。アンジオポエチン-2(Ang-2)と血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)を中和することにより、視力を脅かす多くの網膜疾患の原因である2つの経路を標的とし、阻害する。Ang-2とVEGF-Aは、血管構造の不安定化により、漏出を引き起こす血管を新たに形成し、炎症を起こすことで視力低下を引き起こすとされている。バビースモはAng-2とVEGF-Aが関与する経路を遮断することで、血管を安定させるよう設計されている。これまでに、新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)および糖尿病黄斑浮腫(DME)の治療薬として、米国、日本、英国、EUを含む世界100か国近くで承認されており、網膜静脈閉塞症(RVO)に伴う黄斑浮腫の治療薬として、米国、日本を含む複数国で承認されている。その他の規制当局による審査は継続中である。
糖尿病黄斑浮腫患者1,474人を対象に2年間の継続投与
RHONE-X試験は、2本の第3相臨床試験であるYOSEMITE試験(NCT03622580)またはRHINE試験(NCT03622593)を完了した糖尿病黄斑浮腫患者1,474人を対象に、バビースモの長期安全性および忍容性を評価する多施設共同による2年間の継続投与試験。YOSEMITE試験およびRHINE試験では、患者はバビースモまたはアフリベルセプト2mgが投与された。一方、RHONE-X試験ではすべての患者が個別に設定された投与間隔でバビースモが投与されている。投与間隔は、網膜液の状態と視力に応じて延長された。主要評価項目は、バビースモの長期安全性および忍容性(眼の有害事象、眼以外の有害事象および抗薬物抗体の有無を含む)で、探索的な目的で長期有効性を評価した。
視力改善・網膜液のドライ化維持・投与間隔の延長示す
年時点での探索的な解析の結果、バビースモ投与の約80%の患者が投与間隔を3~4か月まで延長した。さらに、初期の第3相試験(YOSEMITE試験およびRHINE試験)時に認められた視力改善と網膜液のドライ化が維持された。また、事前に規定した探索的評価項目では、バビースモ投与の約90%以上の患者でDMEが消失(中心領域網膜厚が325μm未満)した。中心領域網膜厚は、網膜の血管構造の不安定化によって引き起こされる漏出による浮腫の評価尺度であり、中心領域網膜厚の低下は網膜液のドライ化を示している。
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