治療の進歩で、残された膵臓に二次的にがんが発生する「残膵がん」が観察されるように
東京医科大学は7月19日、膵がん切除後の残膵に発生するがん(残膵がん)と先行膵がんの分子異常プロファイルを比較することにより、残膵がんの発生様式を明らかにしたと発表した。この研究は、同大消化器外科学分野(茨城医療センター消化器外科)の鈴木修司主任教授、東北大学大学院医学系研究科病態病理学分野の古川徹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Annals of Surgery」電子版に掲載されている。
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近年、膵臓がんの診断治療法が進歩することにより、膵がん切除後の残された膵臓に二次的にがんが発生する、残膵がんが観察されるようになってきた。これら残膵がんは、発見時進行がんのことが多く、外科的に切除できず不良な経過をとることがしばしばだ。効果的モニタリングで、より早期に発見し切除できれば、これら残膵がんの経過を改善できる可能性がある。しかし、残膵がんは単独施設では症例は少なく、多施設での検討が必要だった。
先行膵がんと残膵がんで同一の分子異常「少」ほど、発生までの期間「長」
今回の研究では、先行膵がんと残膵がんの詳細な分子異常プロファイリングを行い、比較。その結果、残膵発生様式が3系統、すなわち、Successional(直系発生)、Phylogenic(分岐発生)、Distinct(独立発生)に分類可能であることを明らかにした。先行膵がんと残膵がんで同一の分子異常が少ないほど、発生までの期間が長くなっていた。また、多くの残膵がんは分岐発生の形、すなわち、先行膵がんの先祖クローンが潜在する形で広がったものから発生していることが示された。
遺伝子パネル検査が広く可能となれば、残膵発がん予測ができる可能性
今回の研究成果により、膵臓がん治療時の遺伝子パネル検査が広く可能となった場合に、残膵における発がん予測ができるようになる可能性が示された。このアセスメントが可能となった場合には経過観察および診断のポイントが明らかになり、また、発がんクローンに対する効果的な治療戦略を立てることで膵がんの予後を改善できる可能性が示された、と研究グループは述べている。
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