ネットを通じた誤情報拡散による「インフォデミック」を改善するには?
京都大学は7月17日、日本のインターネット利用者6,000人を対象とした調査を2021年に実施し、コロナ禍における健康情報のウェブ検索とeヘルスリテラシーの関連性、そしてウェブ検索時に直面した課題について明らかにしたと発表した。この研究は、東京都健康長寿医療センター研究所の光武誠吾研究員、京都大学医学研究科の高橋由光准教授、中山健夫教授、石﨑達郎非常勤講師、早稲田大学の岡浩一朗教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Medical Internet Research」にオンライン掲載されている。
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中、インターネットを通じて多くの誤情報や偽情報が急速に拡散し、深刻な公衆衛生上の問題を引き起こした。これらは、「インフォデミック」と呼ばれている。インターネット上の健康情報を適切に収集し、理解・活用し、適用してくためにeヘルスリテラシーの必要性が強調されている。その一方で、eヘルスリテラシーの低いインターネットユーザーと高いユーザーの間で、COVID-19情報の検索と利用の難しさを比較した研究はほとんどなかった。
2021年10月に調査実施、eHEALS/DHLIなどを使用
研究グループは、2021年10月に、日本のインターネットユーザー6,000人を対象にインターネット調査を実施した。ヘルスリテラシーを測定するために「ウェブ1.0のeヘルスリテラシースケール(eHEALS)」と、デジタルヘルスリテラシー評価ツール「ウェブ2.0のDHLI」、および、DHLIのうち、「情報検索、コンテンツ投稿、信頼性評価、適用可能性判断、基本操作スキル、ナビゲーションスキル、プライバシー保護」の7つの下位尺度より構成される「COVID-19パンデミック版(DHLI)」を使用した。インターネットの健康情報探索行動は、検索したウェブ情報源(10項目)と、参加者が新型コロナウイルス感染症に関して検索したトピック(10項目)で評価した。さらに、コロナに関するインターネットの情報探索と利用において困ったことについて自由回答を得た。
半数の参加者は情報検索に困難、DHLIが高いほど困っている人の割合減る
その結果、高いeヘルスリテラシーを持つ参加者は多様な情報源を利用する傾向があったが、ナビゲーションやプライバシー保護のスキルが高い参加者は慎重に情報を利用していた。半数の参加者(47%)は、情報検索に困難を感じていた。難しさを感じた人とeHEALSの関連性はみられなかったが、DHLIが高いほど困っている人の割合が減っていた。彼らは、「情報の質と信頼性」「必要な情報の過不足」「公共機関等への不信感や疑念」「コロナ関連情報の信頼性」の面で、情報検索の難しさを抱えていた。「プライバシーとセキュリティへの懸念」「情報検索の課題」「不安とパニック」「行動制限」など、より具体的な懸念も示していた。
次のインフォデミックに備え、情報提供のあり方の検討必要
新たな感染症拡大の危機に備える「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」が令和6年7月2日に全面改定されたが、同時に、次なるインフォデミック対策も不可欠となっている。「正しい情報」をつくり、伝えていくことは大切であるが、同時に、一般の人が、インフォデミックにおいて何に困ったのか、情報ニーズは何かを明らかにすることも大切だ。信頼性のある高い質の情報を必要なときに過不足なく提供すること、平常時より各公的機関が情報提供機関として市民からも信頼を得ていくことが求められる。同時に、プライバシー保護、パニックへの対応、自由と規制のバランスなども、考えていかなければならない。「インフォデミックにおけるウェブ情報検索の課題を体系化し、次なるインフォデミックに備えて情報提供のあり方を検討する必要がある」と、研究グループは述べている。
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