TKA患者52人対象、術前・後2週の疼痛強度と疼痛の性質を評価・比較
畿央大学は7月12日、人工膝関節全置換術(TKA)術前・術後で患者が訴える疼痛の性質において、とりわけ術後2週の「ひきつるような」という疼痛の性質が、術後3か月・6か月まで長引く痛みの存在に関連していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院の古賀優之博士後期課程、森岡周教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
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TKAの施行によって、歩行や階段動作といった日常生活の問題が改善される一方、およそ2割の患者は長引く痛みを経験している。TKA術前・術後の疼痛強度は長引く痛みの関連因子だが、その要因はさまざまだ。
疼痛の性質は、痛みの病態を理解するために重要な情報を提供する。そのため、今回の研究では、術前・術後に患者が訴える疼痛の性質に着目。術後3か月・6か月の疼痛強度との関連性を分析した。具体的にはTKA患者52人を対象に、術前と術後2週の疼痛強度(Numerical Rating Scale: NRS)とさまざまな疼痛の性質(Short Form McGill Pain Questionnaire–2:SFMPQ2)を評価し、それぞれを比較した。
「ずきんずきん」など関節炎由来の疼痛、術前~術後2週で改善
研究の結果、関節炎に由来するような「ずきんずきん」や「鋭い」「うずくような」といった疼痛の性質はTKAの施行後に改善されていることがわかった。「ずきんずきん」や「鋭い」「うずくような」「疲れてくたくたになるような」といった疼痛の性質は、術前と比べて術後2週で有意に改善した。また、「さわると痛い」や「むずがゆい」といった疼痛の性質はわずかに悪化した。
術後2週「ひきつるような」疼痛、術後3・6か月遷延痛の存在と関連
続いて、マルコフ連鎖モンテカルロ法による事後分布推定を用いたベイズアプローチによって、術前・術後2週における疼痛の性質と、術後3か月・6か月時点における疼痛強度の関連性を分析した結果、いくつかの術前(「ビーンと走る」「うずくような」「軽く触れると痛い」「しびれ」)と、術後2週(「ひきつるような」)の性質が、術後3か月の疼痛強度と関連していることがわかった。また、これらの性質と術後3か月および6か月における遷延痛の存在(NRS≧3)の関連性を分析したところ、術後2週における「ひきつるような」のみが関連していることがわかった。
いくつかの疼痛の性質(術前:「ビーンと走る」「うずく」「軽く触れるだけで痛い」「しびれ」、術後2週:「ひきつるような」)は、術後3か月の疼痛強度と関連していた。さらに、術後2週の「ひきつるような」といった疼痛の性質のみが術後3か月、6か月における遷延痛(NRS≧3)の存在と関連していた。
今後、疼痛性質の背景にある運動障害や末梢/中枢神経制御メカニズムを検証
TKA術後遷延痛の予防において、周術期の疼痛管理で特に焦点を当てるべき疼痛の性質が明らかとなり、痛みの病態に基づいた介入戦略選択の一助になると考えられる。今後はこのような疼痛の性質の背景にある運動障害や末梢/中枢神経制御のメカニズムを検証していく予定だ、と研究グループは述べている。
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