家族歴なしの患者、従来の原因遺伝子に変異を認めない場合も
東京医科歯科大学は7月17日、日本国内27施設の協力を得て、家族内に同じ病気を認めない成人の多発性嚢胞腎患者157人を対象に網羅的遺伝子解析を行い、IFT140の変異を原因とする患者が7人存在することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科腎臓内科学分野の蘇原映誠准教授、森崇寧助教、藤丸拓也非常勤講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Kidney International Reports」オンライン版に掲載されている。
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指定難病である多発性嚢胞腎の中で、成人に多く認められる常染色体顕性多発性嚢胞腎の原因は、PKD1またはPKD2という遺伝子の変異によると考えられている。しかし、多発性嚢胞腎患者のうち、家族内に同じ病気を認めない患者が約1割いることが知られており、これらの患者の中には、PKD1またはPKD2の遺伝子に変異を認めない患者がいることがわかっていた。
近年の遺伝子解析技術の進歩により、PKD1やPKD2以外にも多発性嚢胞腎の原因となる遺伝子が明らかになっている。しかし、家族歴がない多発性嚢胞腎患者において、従来の原因遺伝子であるPKD1やPKD2に変異を認めない患者は、どのような遺伝子が原因で病気を発症しているかは不明だった。
家族歴がない成人患者157人を網羅的遺伝子解析、7人にIFT140変異
今回研究グループは、日本国内27施設の協力を得て、家族歴がない成人の多発性嚢胞腎患者157人を対象に網羅的遺伝子解析を行った。その結果、7人(4.5%)で多発性嚢胞腎の新たな原因遺伝子とされているIFT140に変異を認めた。また、51人で従来の原因遺伝子であるPKD1またはPKD2に変異を認めた。さらに、IFT140を原因遺伝子とする患者は、従来の原因遺伝子であるPKD1を原因遺伝子とする患者と異なり、腎機能障害の進行が緩やかで、腎臓にできる嚢胞の形も特殊であることがわかった。
PKD1やPKD2に次いで3番目に多い原因遺伝子
今まで日本ではIFT140を多発性嚢胞腎の原因遺伝子とする報告はなかった。しかし、家族歴がない多発性嚢胞腎患者では、IFT140を原因遺伝子とする患者が約5%存在しており、従来の原因遺伝子であるPKD1やPKD2に次ぐ、3番目に多い原因遺伝子であると考えられた。「日本でもIFT140を原因遺伝子とする患者が比較的多く存在していることがわかった。この結果は、家族歴がない成人の多発性嚢胞腎患者の診断だけでなく、薬剤治療適応の決定や遺伝カウンセリングなどさまざまな臨床への還元が期待される」と、研究グループは述べている。
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