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毛髪鼻指節骨症候群の成長障害と骨格病変、モデルマウスでの再現に成功-阪大

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2024年07月19日 AM09:30

早期致死となるTrps1、成長障害などの病態研究は困難だった

大阪大学は7月4日、毛髪鼻指節骨症候群の患者に起こる、生後の成長に伴いその症状が顕著になる骨格系病変の一部を再現するマウスを作出したと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科組織・発生生物学講座の佐伯直哉招へい研究員、阿部真土講師、大庭伸介教授、生化学講座の波多賢二准教授、顎顔面口腔矯正学講座の犬伏俊博講師、歯科保存学講座の伊藤祥作准教授、障害者歯科学講座の秋山茂久准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Human Molecular Genetics」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

)は、転写因子であるTrps1遺伝子の変異により発症する希少な疾患である。この症候群では、毛髪形成の異常や、特徴的な顔かたちが特徴として現れる。他にも、指の短さや、心臓や腎臓にも重篤な形成異常が見られたりするなど、その病状は多岐にわたる。また、生まれつきの症状だけではなく、生後に成長障害が顕著となったり、若年期から変形性関節症などを発症するなど、患者の成長に従って顕著になる症状もある。希少な疾患であるため、その病態の解析や新規治療標的発見のためには、その病態を再現する動物モデルの作出が極めて重要である。

これまでのTRPSの病態、発症メカニズム解析には、Trps1遺伝子ノックアウトマウスが大きな貢献をしてきた。しかし、これらのマウスは胸郭の発育異常により自発呼吸が難しくなり、生後まもなく死んでしまう。そのため、成長障害や変形性股関節症のような、TRPS患者において生後に顕著となる病態については詳しく検討することができなかった。

ATAC‐Seq・ChIP‐seq解析で、Trps1遺伝子の発現制御候補領域を2か所同定

研究グループは、TRPS遺伝子の発現を消失させることなく、その量を低下させることで、出生直後の致死を回避し、TRPSの生後病態を再現するモデルマウスが作出できると考えた。そこで、Trps1遺伝子の発現制御領域を同定するため、マウス肋軟骨において、次世代シークエンサーを駆使した解析を行った。具体的には、オープンクロマチン領域をATAC‐Seq解析で、活性化エンハンサーの指標となるヒストン修飾状態をChIP‐seq解析で探索した。その結果、Trps1遺伝子の第1イントロン内に発現制御候補領域を2か所見出した。

2つの候補領域を欠失、・股関節の成熟異常を認めるマウスの作出に成功

まず、2つの候補領域(3~4kb)を個別に欠失させたマウスを作出した。これらのマウスより採取した肋軟骨細胞においてTrps1遺伝子の発現が低下していることを確認できたものの、TRPS患者で生後に生じる病態は認められなかった。

次に2つの候補領域を含む領域(20kb)を欠失させたマウスを作出したところ、生後数週後から顕著な成長障害が認められ、多くのTRPSの患者で見られる股関節の成熟の異常を認めた。このマウスより採取した肋軟骨細胞におけるTrps1遺伝子の発現は、前述の個別に発現制御候補領域を欠失させたマウスよりさらに低下していることがわかった。さらに20kbのゲノム領域を欠失させたマウスにおいて、片アリルでTrps1遺伝子を欠失させると、成長障害とともに長管骨の二次骨化中心形成の大幅な遅延、膝蓋骨の位置異常などより重篤な異常が見られた。長管骨の二次骨化中心の正常発生は陸棲動物において骨端部の軟骨成長板を保護する役割を持つことが示されており、今回の新規Trps1ゲノム変異マウスの解析よりTRPS患者に見られる成長障害の要因の一つに二次骨化中心の形成異常がある可能性も示唆された。

治療標的の同定や新規治療法の開発にも役立つと期待

今回の研究では、生後に見られるTRPS患者の骨格系病態の一部を再現するマウスの作出に成功した。「希少疾患であるTRPSの生後の病態解明のみならず、治療標的の同定や新規治療法の開発に役立つと考えられる」と、研究グループは述べている。

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