カルボプラチンに高頻度発現のCINV、使用される3種の予防薬では効果不十分
浜松医科大学は6月5日、細胞障害性抗がん剤カルボプラチンに伴う悪心・嘔吐(CINV)の予防に、オランザピンを併用した制吐療法が有用であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大臨床薬理学講座の乾直輝教授、内科学第二講座、医学部附属病院薬剤部、静岡県内15の関連病院らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Oncology」に掲載されている。
細胞障害性抗がん剤などの薬を用いた、がん薬物治療を行う時に、嘔吐や悪心、食欲低下などの副作用が発現することがあり、がん薬物療法に伴う悪心・嘔吐(CINV)と呼ばれている。がん薬物治療では、患者のQOLを保ち、安心して治療が実施できるように、このCINVが発現しないように予防することが重要である。かつては、CINVによる苦痛のため、抗がん剤の投与を中止したり延期することが必要となり、結果として治療が不十分となる患者も多かったが、現在では予防的に制吐剤を使って対応している。肺がんや婦人科がんなどで頻用されるカルボプラチンは、投与当日から投与後5日程度まで高頻度でCINVが発現する。カルボプラチンを投与する時は、3種類の予防薬を用いて対応しているが、十分な予防ができていないことが問題だった。
カルボプラチン治療時、3種+オランザピン追加の第3相試験実施
同大医学部附属病院および関連する静岡県内の15病院において、カルボプラチンを用いた治療を受ける患者を、従来の3種類の予防薬を用いるグループと、3種類に加えてオランザピンという薬を追加するグループに無作為に振り分ける第3相試験を実施した。
カルボプラチン投与から5日間の嘔吐・悪心・食欲低下、オランザピン追加で減少
この研究では、カルボプラチン投与してから5日間の、嘔吐、悪心、食欲低下などの出現頻度を比較した。378人を対象に研究を行った結果、オランザピンを追加したグループで、悪心や食欲低下の出現する患者が少ないことがわかった。
オランザピン使用、患者負担を軽減したがん治療につながると期待
がん薬物治療は、カルボプラチンのような細胞障害性抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤などを組み合わせて個別化治療を行うことが重要である。どの薬を用いる場合も、患者が安心して治療が受けられるように、副作用対策をしっかり行うことは必須となっている。オランザピンはもともと精神疾患に対して使用される薬だが、他のグループによって行われた研究で、抗がん剤シスプラチンのCINVを予防することが知られていた。今回の研究によって、オランザピンを併用したCINVの予防が、より多くの患者が使用するカルボプラチンによるCINV対策にも有用であることがわかった。「オランザピンの使用によって患者の負担を軽減したがん治療が可能になると期待される」と、研究グループは述べている。
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・浜松医科大学 プレスリリース