2024年度から日本における対策が必要な疾患にとなったCOPD
アストラゼネカ株式会社は7月9日、日本の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者を対象にした「EXAcerbations of COPD and their OutcomeS on CardioVascular diseases(EXACOS-CV)Japan研究」にて、リアルワールドデータを用いて日本で初めてCOPDの増悪と、その後の入院を伴う心血管イベントとの関係を示したと発表した。研究成果は、「Advance in therapy」に掲載されている。
COPDは、肺の気流閉塞により息切れが起き、体力が消耗する進行性の疾患。世界中で推定3億9,190万人に影響を与え、世界の死因第3位となっている。日本においては推定有病患者数が約530万人とされる中、治療を受けているCOPD総患者数は約36.2万人と報告されており、未受診率・未診断率の高さが課題となっている。肺機能の改善、増悪の減少、また、息切れなどの日常的な症状を管理することがCOPDの重要な治療目標だ。COPDは悪化すると著しい肺機能の低下、生活の質の大幅な低下、平均余命の大幅な短縮、死亡リスク増加につながる可能性がある。
そのため、がん・循環器疾患・糖尿病と並んで国民の健康を推進する健康日本21(第二次、第三次)で対策が必要な疾患として目標が掲げられている。2024年度からの健康日本21(第三次)においては、人口10万人当たりにおける死亡率が現状値13.3人(2021年)から目標値10.0人(2032年度)まで減少させるという新たな目標が掲げられた。
COPD増悪後の入院を伴う心血管イベントリスク、増悪後30日間でハザード比1.44
EXACOS-CV Japan studyは、COPD増悪とその後の心血管イベントリスクを検証している世界規模のリアルワールドエビデンス、EXACOS-CVプログラムの一つで、現在10か国が同プログラムに参加している。今回、Medical Data Vision(MDV)データベースを使用して2015年1月~2018年12月にCOPDと診断された40歳以上のCOPD患者データを抽出し、COPD増悪とその後の重篤な心血管イベントとの関連性を、時間依存性Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比を推定した。
解析の結果、COPD増悪後の入院を伴う心血管イベントのリスクは増悪後30日間でハザード比が1.44(95%信頼区間 1.33-1.55)であり、増悪後365日まで増加していた[ハザード比1.13(95%信頼区間 1.04-1.23)]。
COPDの適切な治療と、増悪後の心血管イベント発生のモニタリングが重要
同研究のScientific Advisory Committeeメンバーである山口大学大学院医学系研究科 呼吸器・感染症内科学講座の松永和人教授は今回の結果について、「本研究により、高齢でやせ型で心血管イベントリスク因子が少ないと考えられている日本人でも、他国と同様にCOPD増悪後の心血管イベントのリスクが増加したことが示された。同結果は、COPD増悪後の心血管イベントの発生には注意深くモニタリングする必要があると同時に、COPD増悪を起こさせない適切な治療介入の必要性を強調している。呼吸器専門医だけでなく、COPDを診療する多くの医師に対しても、より良い診療につながる重要なエビデンスであると考えられる」と、述べている。
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・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース