厚生労働省は5日の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で、ドラッグロス解消に向け、国内開発未着手の医薬品86品目について、学会や患者会からの要望を待つことなく国が情報を整理して検討会議に上げる新規ルートを導入する方針を示した。
2023年3月時点で欧米では承認されているものの日本で未承認の医薬品は143品目あり、このうち86品目(60.1%)は国内開発も着手されていない。検討会議の現行システムでは、学会・患者会等からの未承認薬等に関する要望を受け、医療上の必要性を判断した上で、製薬企業に対する開発要請または開発を担う企業を公募するルートとしている。
この日の会議で厚労省は、ドラッグロス解消に向け、検討会議における評価・開発要請を加速化するとして、新規ルートを提示。国内開発未着手の86品目について、学会等からの要望を待つことなく、医療上の必要性の評価に必要な情報の整理を国が実施することとした。
厚生労働科学特別研究事業において、医薬品のデータ整理、関連学会へのニーズ調査、市場性調査、開発の優先順位付け等を実施した上で、検討会議に情報を上げる。
康勝好構成員(埼玉県立小児医療センター小児がんセンター長)は、「小児領域は市場規模が小さいため、何らかのインセンティブがなければ難しい。小児のリクルートも困難なので、可能な限り必要最小限の治験で良いよう配慮してほしい」と求めた。
宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、「日本の開発状況が決して閉鎖的でないことが国内外に広まっていない。審査体制も含めて広く周知することが必要」とした。
一方、日本製薬工業協会は同日、検討会議で提案された「ドラッグロス解消に向けた取り組み」に対し、「効果的に進むよう国と共に取り組んでいく」とのコメントを発表した。
製薬企業がどう行動するのかについては、米国研究製薬工業協会(PhRMA)や欧州製薬団体連合会(EFPIA)と共同で行っている各社の意識変容・行動変容の調査結果を今夏に公表する予定にしていると説明した。