SGLT2-I・GLP1-RA併用が単剤療法より有益も、薬剤順番が腎保護に与える影響は不明
横浜市立大学は7月2日、SGLT2阻害薬(SGLT2-I)とGLP1受容体作動薬(GLP1-RA)の併用療法における先行薬剤の違いが慢性腎臓病(CKD)患者の腎アウトカムに与える影響について明らかにしたと発表した。この研究は、同大横医学部循環器・腎臓・高血圧内科学の塚本俊一郎助教、田村功一主任教授、小林一雄客員准教授(神奈川県内科医学会高血圧・腎疾患対策委員会委員、内科クリニックこばやし院長)ら、東海大学腎臓内分泌代謝内科の豊田雅夫准教授、福岡大学内分泌・糖尿病内科の川浪大治教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Diabetes, Obesity and Metabolism」に掲載されている。
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CKD患者数は、国内で1300万人以上と推定されている。特に糖尿病を合併する場合には、心血管疾患や末期腎不全に至るリスクが高くなることがわかっており、その対策が重要となっている。これらの疾患を有する患者への治療効果が期待されている薬剤にSGLT2-IとGLP1-RAがある。どちらの薬剤も元は糖尿病患者の血糖値の低下を目的で開発された薬剤だが、その後の研究から血糖値の低下作用を超えた腎臓への保護的作用を有することがわかってきた。近年、両者の併用療法が単剤療法と比べてより腎臓にとって有益である可能性もわかってきたが、両者の併用療法において使用する薬剤の順番が腎保護に与える影響は不明だった。
どちらの薬剤先行グループが腎アウトカム改善するかを検討、患者のリアルワールドデータより
そこで研究グループは、SGLT2-IとGLP1-RAを実際に併用した患者のリアルワールドデータRECAP研究(先行薬剤別にみた2型糖尿病症例におけるSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬併用投与による腎保護効果の検討)を用いて、どちらの薬剤先行グループが腎アウトカムを改善するかについて検討した。研究グループは、実際にSGLT2-IとGLP1-RAを併用した438人の日本人2型糖尿病合併CKD患者のデータをもとに、傾向スコアマッチングとWin ratioいう解析手法を用いて検討を実施した。
SGLT2-IよりGLP1-RA先行で腎臓への保護効果「高」の可能性
傾向スコアマッチングの結果、腎複合アウトカムの発生率は2グループ間で差がなかった(GLP-1RA先行グループ10%、SGLT2-I先行グループ17%、オッズ比1.80、95%信頼区間[CI]0.85~4.26、p=0.12)。しかし、Win ratioを用いた解析ではGLP-1RA先行グループの勝率は1.83(95%CI 1.71~1.95、p<0.001)とSGLT2-I先行グループよりも有意に高く、GLP1-RA先行投与の方がより腎保護的である可能性が示された。
GLP1-RA先行、アルブミン尿進展抑制効果「高」
また、ベースラインからの対数化アルブミン尿(LnACR)変化はGLP1-RA先行グループで有意だったが、SGLT2-I先行グループでは有意ではなかった。特に、GLP1-RA先行グループでは、SGLT2-I併用療法追加後にアルブミン尿の大きな減少を認めた(ベースvs.追加時:-0.01[95%CI、-0.33〜0.31];p=1.0、追加時vs.併用治療後:-0.37[95%CI, -0.68 to -0.06];p=0.02)。
今回の研究は、SGLT2-IとGLP1-RAの併用療法における先行薬剤の違いがCKD患者の腎アウトカムに与える影響を検討した世界初の研究成果になる。CKD患者数が世界的に増加している現代において、同研究成果は今後のCKD治療の進歩に大いに貢献することが期待される、と研究グループは述べている。
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