■制度周知の後押し期待
研究班は、これまでの研究で製薬企業を対象としたアンケート調査やヒアリング調査を実施し、企業側から見た医薬品市販後安全対策の現状と課題を網羅的に収集・分析した。RMPは個々の医薬品に関する特定の安全性の課題を安全性検討事項として明示し、それらに対する安全性監視やリスク最小化のための活動を計画・実施することで、リスクを適切に管理するもの。2013年に国内で運用が開始されている。
1200を超える品目のRMPが医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出されているが、市販後安全対策に十分には活用されていない実態も明らかになっている。市販後に集積されていく情報を分析・評価しながら、適時に更新されるべきものであるにも関わらず、製品上市後から再審査期間満了までにRMPの実質的な見直しが行われている品目は極めて少ない。
そこで研究班は、RMPの制度上の位置づけを明確にするよう提案した。薬機法本体にはRMPの規定がなく、GVP省令に定義や活動内容が規定され、その実施は個々の医薬品の承認条件として製造販売業者に指示される形態が取られるなど、「法令上に基づいた対応」ではなく「個別の品目対応」となっている点を疑問視した。
さらに、RMPに基づいて実施される製造販売後調査の成績は再審査申請資料とされる一方で、再審査申請資料の作成で遵守が求められるGPSP省令にはRMPへの言及がないという曖昧な点も指摘している。
RMPと再審査制度、RMPとGVP・GPSP省令の関係を整理し、RMPの策定・改訂、それに基づくリスク管理の実施に関する規定を法律本体に設け、RMPに基づいた医薬品の市販後安全対策に関する法令上の仕組みを構築することが「一つの対応として考えられる」と提言した。
一方で、RMP制度の運用も見直すよう求めた。安全性検討事項で定義された「重要なリスク」をリスクに対する追加の安全性監視やリスク最小化策が不要になった時点で削除しやすくする運用上の整理や、個別品目のRMP見直しに関して規制当局と相談する枠組みを明示的に設ける必要性を挙げた。
追加の安全性監視活動では「使用成績調査の役割は大きく低下した」とし、安全性情報データベースも利用しながら、重要な個別リスクに焦点を当てた新たな安全性監視システムの構築に力点を移していくべきとした。
日本製薬団体連合会も次期薬機法改正でRMPの法的位置づけを整理するよう要望しているが、研究代表者の成川氏は「再審査の終了をもってRMPを承認条件から削除するという再審査制度中心の市販後安全対策が一律に最適であるかは議論の余地がある。RMPの活用により、市販後安全対策のサイクルをより機動的に回すことができれば、安全対策の効果を高めることにつながる」と強調する。
一方、医療現場では、薬局薬剤師にも患者向けRMP資材を用いて安全性に関する説明や指導を行うことが期待されている中、「RMPが法律に規定されることで医療現場でのRMP制度の正しい周知にもつながるのではないか」と話している。