研究報告では、「薬価差を得ることを目的として取引により生じる薬価差は、個々の医薬品の価値を反映していない」とした上で、過度な薬価差・薬価差の偏在の是正が必要との問題意識を示した。
さらに、薬価差が薬局や医療機関の経営原資の一部になっていることにも言及し、「診療報酬・調剤報酬の中で必要分を補填することも合わせた検討が必要になる」と指摘した。
石牟禮氏は、市場実勢価による薬価改定を行う現行制度下では「薬価差は縮めることはできるが、解消は構造的に無理。しかし、薬価改定したら解消されるわけではない。とすると、薬価差をどう捉えるかという議論をしなければならない」と述べ、そのために厚労省が行う実態調査は「すごく重要」との認識を示した。
その上で「丁寧な議論ができるような調査結果を期待している」と話した。薬価研としては「薬価改定のあり方の議論の中で、薬価差がどこでどう発生しているのかといった検討は必要になる」と説明した。
そのほか研究報告では、薬価研の運営委員会社を中心に、後発品メーカーを含む87社を対象にした今年度薬価制度改革に関するアンケート調査結果を示した。
その中で、新薬創出加算のルール見直しにおいてイノベーション促進に最もつながる項目について尋ねたところ、後発品企業を除く55社で最も多かった回答が「企業指標の加算係数廃止」(25社)、次いで「品目要件の対象品目追加(小児・迅速)」(22社)だった。
企業指標の見直しを評価した理由には「品目を評価するシンプルな制度となり、予見性が向上した」「企業の規模に依らず薬価が維持され、事業への好影響が期待できる」などの意見が寄せられた。
品目要件の見直しに対しては「小児や優先審査品目のインセンティブ拡充は、早期に投資を回収し開発が促進する」「日本での開発の後押しとなる」との声が上がった。
企業内でも「小児開発の社内承認が得られなかったプロジェクトの検討が進んでいる」といった動きが出ているほか、今後小児薬や革新的新薬の早期開発・導入に期待を寄せる意見や、「薬価およびビジネスの予見性が向上し、難病・希少疾患の新薬開発やライセンス活動への投資など革新的新薬の国内上市に好影響がある」との意見が出た。
平均乖離率を超えた場合に適用されないルールについては、「製薬企業が関与できない指標である。予見性を損ねる」との意見があった一方で、「革新的な新薬ならば市場における評価も高いため、理解できる」との前向きに評価する声のほか、「乖離率縮小への努力に注力する流通戦略の重要性が増した」との見方もあった。
市場拡大再算定については、除外する領域を尋ねた結果、「複数回再算定が適用されている品目は、除外の対象にすることが望ましい」「小児・希少疾患の効能を持つ品目は、市場ニーズの高い品目の採算性の悪化と国内開発・上市の機会を損なうために除外すべき」との意見があった。