ALK陽性の転移性NSCLCの一次・二次治療に対して多くの国で既承認
中外製薬株式会社は6月10日、抗悪性腫瘍剤のALK阻害剤アレクチニブ塩酸塩(製品名:アレセンサ(R))について、再発のリスク(病期IB[腫瘍が4cm以上]~IIIA期[UICC/AJCC 第7版])が高い成人ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する単剤の術後補助療法として、欧州委員会(European Commission:EC)より承認されたことを発表した。
アレセンサは同社で創製されたALK陽性NSCLCに対する選択性が高く、中枢神経系においても活性がある経口剤である。すでに、日本、米国、欧州、中国を含む世界100か国以上でALK陽性の転移性NSCLCに対する一次および二次治療に対して承認されている。臨床現場では9万4,000人を超える進行期の患者の治療に使用されている。日本では「再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫」に対しても承認されている。
欧州における今回の承認は、米国食品医薬品局(FDA)により承認された検査に基づくALK陽性NSCLC(腫瘍が4cm以上またはリンパ節転移陽性)に対する腫瘍切除後の補助療法として、2024年4月にFDAがアレセンサを承認したことに続くもの。同社は世界各国の規制当局へ申請を行っている。
National Comprehensive Cancer Networkの腫瘍学診療ガイドラインを含む国際的ガイドラインにおいては、臨床医の意思決定を支援するため、進行NSCLC患者と病期IB~IIIAと一部のIIIB患者(UICC/AJCC第8版)の外科切除された腫瘍組織または生検組織を、ALK、EGFR、PD-L1バイオマーカーに対して検査することが推奨されている。
P3試験、プラチナ製剤ベースの化学療法と比較して再発または死亡のリスクを76%低下
承認の基となったのはALINA試験である。病期IB(腫瘍が4cm以上)~IIIA期(UICC/AJCC 第7版)のALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)を切除した患者を対象として、術後補助療法としてアレセンサとプラチナ製剤ベースの化学療法の有効性および安全性を比較する第3相、ランダム化、実薬対照、多施設共同、非盲検臨床試験である。同試験には、アレセンサ群または化学療法群のいずれかにランダム化された257例が登録された。主要評価項目は無病生存期間、副次評価項目は全生存期間、有害事象の発現状況などだった。
その結果、アレセンサはプラチナ製剤ベースの化学療法と比較して、再発または死亡のリスクを76%低下させることを示した(ハザード比=0.24、95%信頼区間:0.13-0.43、p<0.0001)。また、探索的解析では、中枢神経系の無病生存期間についても、アレセンサはプラチナ製剤ベースの化学療法と比較して、再発または死亡のリスクを78%低下させた(ハザード比0.22、95%信頼区間:0.08-0.58)。また、同試験における安全性および忍容性は、ALK陽性の転移性NSCLCを対象とした過去の試験と概ね一貫しており、予期せぬ所見は認められなかった。これらのデータは、2024年4月に「New England Journal of Medicine」に掲載されている。
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・中外製薬株式会社 プレスリリース